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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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失せ物探し 探偵奇談26 前編

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ねことねずみとり いたちがおいかけた



朝から三年生を中心にたくさんの部員が自主練習に励んでおり、伊吹もまたその中で集中力を高めていた。しかし今朝は意外なことに、瑞が現れない。いつも伊吹と鍵開けを争う位早く来ているのだが、と不思議に思っていると。

「先輩、どうしよう…」

朝練も終わり各自が教室へ向かう頃になり、瑞は現れた。鍵を閉めようと最後まで残っていた伊吹は、半泣きになっている瑞がやってくるのをみてぎょっとする。迷子の子どものようにくちびるを震わせているのだ。

「ど、どうした?何かあったのか?」
「視えない…」
「は?何が?」
「とられちゃった…」





 校舎に向かう道すがら、瑞は昨日寮であったこと、家で起きた奇妙なことを伊吹に語った。これから合宿をするという場所で、なんて恐ろしい物を見つけてくれたんだおまえは、という気持ちではあったが、別に瑞が悪いわけではない。そして瑞が戸惑っているのは、その絵だか人形だかが怖いということではなかった。

「視えなくなったんです、今まで視えていたものが」
「え?」

視える、というのは単なる視覚の話ではない。この須丸瑞が只者ではないのは、常人にはない力を備えているからだ。霊感、第六感、そういった呼ばれ方をする力。瑞はその力で、多くのトラブルや事件に巻き込まれ、その解決に尽力していた。彼という人間を形作る数多くの要素や魅力の中で、それは跳びぬけて特別な個性だった。

それが、なくなってしまったのだと瑞は言う。彼は続けた。

「学校のそばの踏切のところにね、毎日おばあちゃんが立ってるんだ。ジョウロを持って」
「自転車小屋の祠の屋根の上に、小さい龍みたいのが巻き付いてるんだよ」
「中庭のお狐さんの祠、小さい狐がたくさん走ってるんだ」
「伊吹先輩が歩いてくるときの音、すごく離れてても近づいてくるのがわかる。伊吹先輩だけの独特のリズムがあって、他の誰とも違うんだ…俺にはそれが、すごく心地いい」
「今日みたいな晴れの日って、風の切れ間に色がつくんだよ。殆ど金色なんだけど、本当にたまにだけ、水色に視えたりするの」

瑞が喋る内容を、伊吹はぽかんとしながら聞く。それはまさに「常人にはない感覚」の話。瑞の視えている世界を、霊感という力を通すと具体的にそう視えたり聞こえたりするのだという。

「それが今日は、全部わかんない…なんで?」

それはつまり、瑞がもつ霊能力というか、そういうものが失われてしまったということなのだ。




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