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研究による犠牲

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                 大団円

 ちょうどその頃、K大学研究所で、ある学会発表があった。それは、
「一卵性三生児」
 なるものの存在であった。
「一卵性双生児」
 というものはよく言われている。
 しかし、ここでいう、
「「一卵性三生児」
 というものは、
「確かにまれではあるが、ありえないことはない」
 ということだったのだ。
 というのは、
「自分とまったく正反対の性格を持った親から生まれる可能性が結構高い」
 というもので、さらには、
「そうでなければ、一卵性三生児というものは生まれない」
 とまで言い切っていたのだ。
 そのニュースを、主人は漠然として聞いていた。
「まさか自分のことだ」
 という意識がないのだろう。
 ただ、母親は、そのことをしっかり理解していて、そして、そのニュースが出たことで、ほくそ笑んでいるのだった。
 そして、母親は、
「この発表のあった研究所の職員が、最近殺された」
 ということも知っていた。
 知っていたというよりも、
「かかわりがあった」
 と言ってもいい。
 もちろん、
「彼女が、殺した」
 などということは考えられない。
 ということであったが、それ以上に、
「帰ってきた息子の記憶がない」
 ということを聴いた時、ショックであったが、しかし、それも、研究所から、
「それもありえることだが、その分、違う記憶が子供の中にある」
 と言われていた。
 というのは、
「それは、母親との絆の記憶なので、もし、子供の記憶が一部欠落していたとしても、あなたにとっては、逆にいいことであるわけで、ただし、これを世間に公表すると、あなたの立場は微妙になる。この計画に加担しているということになりますからね。そこは、肝に銘じでくださいね」
 ということであった。
「分かりました」
 ということで納得したが、
「父親が疑念を抱いた時は?」
 というと、
「じゃあ、こちらのどちらかを服用させてください」
 と言って、
「赤い薬と、青い薬」
 というものを、彼女の目の前に置いた。
「赤い薬は、毒薬です。そして青い薬は、記憶を抹消する薬です、それを使えば、あなたのこと、そして、子供のことを忘れてしまうでしょう」
 と言われた。
「とにかく、この一卵性三生児という研究は、人類が今迎えている危機を、何とかできるかも知れないということで研究されていることなんです。それを一人の人間の意志で崩してしまうのはいかがなものか」
 というのであった。
 あくまでも、科学者というのは、
「自分の理屈のために、どんな言い訳でも言いつくす」
 というものだ。
 それが、
「マトリョシカ人形」
 なのか、
「合わせ鏡」
 なのか、
 とにかく、
「無限で果てしなく、交わることのない平行線」
 であったとしても、最後がある以上、
「無限というのはありえない」
 といえるのではないだろうか?
「三すくみ」
 と、
「三つ巴」
 というものが、
「三人の子供を宿すことで、何かの研究によって、人類が救われることになるのか?」
 それとも、
「あくまでも、金儲け」
 ということで終わるのか?
 誰が答えを知っているというのだろうか?

                 (  完  )
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作品名:研究による犠牲 作家名:森本晃次