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東京メサイア【初稿】

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#6.ハッカー



東京下町プレハブアパートの一室2階(8:53)
薄暗い部屋に明るく光る一台の15型ディスプレイ
くすんだ灰色の画面に白文字のコマンドが打ちこまれていく
文字の打ちこみが止まり、ENTERキーが押される
緑色に光る数字と記号が画面を埋め尽くし流れるようにスクロールを始める
ゲーミングチェアに背もたれに寄りかかりひと息つく仲根弘樹
玄関ドアのほうで人の気配がする

招堤 「(声)クーバーイーツでぇす」

別の小型ディスプレイに目をやる仲根
玄関の外に取りつけた小型に防犯カメラ映像
カーキ色のキャップを被った警視庁二課の刑事招堤託久がドア前に立っている
画面の上端ギリギリのもうひとりの人影
よれた黒っぽいスーツの男を見て腰を浮かす仲根

仲根「はーいちょっと待ってください」

と生返事をしながら目の前のノートPCを閉じリュックサックにしまう仲根

招堤 「仲根さーん、開けてください」

ドアの前で焦れてノックする招堤
ドアノブを回し押し入ろうとする招堤
ガラガラと窓が開かれる音が部屋から聞こえてくる

織場「おい」

招堤をドアから離れさせ革靴の底でドアを蹴破る警視庁二課刑事の織場薫
薄暗い部屋に人影はない
開いた窓の外から何かが落ちる物音

織場「ショウタ、裏へ回れ」

デスクの上に3台のモニター
うち一台が玄関を映すカメラ映像
もう一台はソースコードが目で追えない速さで流れている
開け放たれた窓から外を覗く織場
窓のすぐ下には自転車置き場の屋根になっている
窓から身を乗り出し自転車置き場の屋根に足を伸ばす織場
足が届かず早々に諦める織場
自転車を全力で漕いで逃走を図る仲根
脇道のない路地の出口を遮る招堤
自転車の向きを変えて引き返す仲根
反対の出口の先に立つ織場
仲根の襟を掴んでセドリックの後部座席に仲根を押しこむ織場
後部座席で手錠を車内吊り手にかけながら仲根に囁く織場
「知ってるか。この若者(運転席に座る招堤を示して)こう見えてトマトが食べられないんだ。変わってるだろ。実家がトマト農家なのにな」

ルームミラーで後部座席を確認してアクセルを踏む招堤
仲根の隣で仲根が持っていたリュックの中身を探る織場

織場 「なんだこれ。(パスポートを取りだす)逃走用か」
仲根 「・・・(無言)」
織場 「警察の個人情報を流出させたのはお前だな」
仲根 「・・・」

バッグの中をさらに手探りする織場
100ドル紙幣100枚束を掴む織場

織場 「用意周到だな。どうやってこんな大金工面した?」
仲根 「・・・」
織場 「ハッキングの報酬か。誰に頼まれてやった?」
仲根 「違います、違います。僕は何もやってません」
織場 「嘘つけ。何もやってなくてこんな大金・・・」
仲根 「だから送られてきたんです」
織場 「送られてきた? 出鱈目言うな」
仲根 「本当なんです。本当に送られてきた」
織場 「誰からだ?」
仲根 「わかりません。送り主、書いていませんでした。ただ・・・」
織場 「なんだ?」
仲根 「これがお金とともに」

折り畳まれた便箋が尻ポケットあることを織場に示す仲根
便箋を取りだして開く織場

『警視庁の地下にあるミヤビというコンピュータに侵入できるかな
一番早く侵入に成功した者にこの100倍の100万ドルを授けよう
釣りだと思われないように先に対価の一部を送った
ゲームに参加するかしないかは貴方次第
しなくても金の返却は要求しない
ただし他言無用でお願いする
我々は貴方のことを見ている』

仲根の顔を窺いながら印刷された文面を読む織場

仲根 「これと同じものが仲間にところにも送られてきていて」
織場 「仲間のところにも?」
仲根 「だからマジものだと思った」
織場 「仲間の居場所を教えろ」
仲根 「居場所なんて知るわけがない。皆偽名を使っている」
織場 「本当か・・・。くそっ」
仲根 「でもミヤビを調べてみたら難攻不落とか言われてるし、100万ドルは魅力かなと」


都庁放送用ブース(9:00)
複雑な面持ちで演台の前に立つ江藤
江藤の表情をとらえる放送用カメラ
プロンプトに映る文面を読む江藤

『東京都知事の江藤です。都民の皆さまに緊急にお知らせすることがございます』

首都圏のNHKと民間放送のTV番組が中断され江藤の顔が映し出される
開店準備の家電量販店の陳列テレビにも江藤のアップ
繁華街の広告ビジョンにも江藤の顔


真緒宅マンション(9:01)
パジャマ姿のままでカウチに寝転びテレビを視る真緒
食べ終わった朝食の皿を片づける家政婦の加恵

加恵 「真緒さま、ご気分は良くなりまして?」
真緒 「まだ何だかだるいの。風邪かな」

スマホをいじりだす真緒
スマホ画面に緊急放送の文字
テレビ画面も緊急放送の文字
キッチンからちらりとテレビを見る加恵
テレビの画面が突然江藤のバストショットに切り替わる

真緒
「あ、マッマだ・・・」

慌ててリモコンでチャンネルを替える真緒
どのチャンネルも江藤の顔
リモコンで画面を消す真緒

加恵 「真緒さま、何か大事な放送みたいです。テレビをつけてもらえませんか」

不貞腐れてリモコンを操作する真緒

『特に東京23区のお住まいの方、23区内にお勤めの方、及び観光等で域外から見えられている皆様にお知らせいたします。その皆様に先にお詫び申し上げると同時に、ご協力をお願いしなければなりません。詳細は副知事の和田からお伝えします』

作品名:東京メサイア【初稿】 作家名:JAY-TA