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東京メサイア【初稿】

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#2.江藤沙耶



東京都(7:10)
重なる車のエンジン音とロードノイズ
スマホを耳にあて通話するサラリーマン
仔犬を散歩させる中年女性を軽やかに追い越すジョガー
新宿中央公園のランニングコースを首にタオルをかけたまま駆ける東京都知事江藤沙耶
地下鉄の地上出口の階段をオフィス街へと急ぐサラリーマンやOLたち
東京都庁舎の正面玄関にランニングウエア姿の江藤が到着する
江藤の後を秘書の八村が自転車を押して追随する
庁舎に入る江藤
傍らに控える警備員に自転車を預け江藤を追う八村

江藤 「もう、いいんじゃない?」

玄関前で膝に手をつき八村を見あげる江藤

八村 「いや、メニューはすべてこなしてもらわないと」
江藤 「42キロ走れる自信が湧いてこないわ」
八村 「頑張ってください。知事が選挙で掲げた公約で残っているの、これだけですから」

玄関ホールを並んで歩く江藤と八村

江藤 「都議会の雰囲気、好きじゃないわ」
八村 「まあ、そんなもんです」
江藤 「あたし、必要?」
八村 「だから、東京マラソンを走って、知事の面目を守ってもらわないと」
江藤 「そっか。マラソンを走るのが知事の仕事ってわけね」
八村 「知事が東京マラソンを走られるのにあたり、知事にお怪我のないようにと陸連と医師会が協力して最適解の練習メニューを・・・」
江藤 「はい、はい」


江藤真緒の自宅マンション(7:10)
ベッドサイドの目覚まし時計が鳴る
時刻7時を確認して停止ボタンを押し再び布団を被る江藤真緒
真緒の部屋のドアをノックする家政婦小西加恵

加恵 「真緒さま、朝食のご用意できてますよ」
真緒 「加恵さん、頭痛い。きょう学校休む」

ドアの前で数秒思案する加恵

加恵 「じゃあお薬用意しますね。リビングにいらしてください」

切り返されて凹む真緒


都庁(7:18)
江藤に続いてエレベータに乗る八村
エレベータの扉が閉まる間際に開く
副知事の和田憲成が慌てた様子で開いた扉から顔を出す

和田 「知事、お話ししたいことが」

江藤、和田、八村を乗せたエレベータが上昇する

八村 「どうしました? 和田さん」
江藤 「あたしシャワー浴びたいのよ。朝っぱらから走らされて(汗を拭う)」
和田 「ああ、東京マラソンですか」
八村 「公約ですから」
和田 「走ることは健康によろしいかと?」
江藤 「走るのは得意じゃないのよ。腕っぷしなら何とか」
和田 「まだ、あの黄金の右腕はご健在なのですか。あの・・・」
八村 「(和田の話を遮って)和田さん、話とは?」
和田 「あ、そうでした。ちょっと困ったことが。ここでは何ですので」
八村 「そうですね、では10階の会議室で」
江藤 「あとでまとめて話聞くから」

途中階でエレベータをひとり降りる江藤

作品名:東京メサイア【初稿】 作家名:JAY-TA