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東京メサイア【初稿】

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#1.ミヤビ



大都会東京
ビル群に朝陽が差しこむ早朝
通勤客を乗せた私鉄車両が橋梁を渡る
都内のJR駅から朝早く出勤する多数のサラリーマンやOLが吐きだされる
交差点の赤信号で停車する乗用車、軽自動車、タクシー、バス
霞が関にそびえる警視庁の建物


(背景に被るテロップとナレーション)
桜田門警視庁直下40メートルの地下に大きな空間が広がっている
その空間は『アグラ』と呼ばれている
第二次世界大戦さなかに日本陸軍によって銃火器の格納庫として造営された
その頃からの呼び名である
現在アグラにあるのは108台のタワー型コンピュータからなるスーパーコンピュータシステム
その名はMIYABI(ミヤビ)
厳格な管理の下、運用されている
ミヤビは21世紀初頭にプロトタイプとして開発された
完成後数年間の稼働を経たのち、新たな高性能なスーパーコンピュータの台頭によりその役目を終えた
一度は現役を退いたミヤビであったが、情報管理の効率化を進める警察庁の目にとまる
かくしてミヤビは警察庁のデータベースとして息を吹き返した
まず東京都内各管轄署のホストコンピュータとの間にネットワークが結ばれた
取り扱うデータは人事管理のほか犯罪履歴や公判記録など多岐にわたった
さりながらミヤビのスペックと記憶容量はいち省庁のデータベースに留まらなかった
日々蓄積される膨大な情報管理に腐心していた内閣府がミヤビに着目し政府直轄のクラウドコンピュータとして利用することを決定する
政府が保持するデータには安全保障に関わる密約や歴史的な外交文書など国家機密に類するものが多数含まれた
よってより厳重なセキュリティの実現が課題となった
ミヤビの開発元であるITG社は政府の要求を満たすためセキュリティ管理に人工知能AIを導入した
ミヤビAIは短期間に驚くべき成果を挙げた
さらにミヤビAI はデータの安全性を高めるため従来の電力供給網と通信網に加え系統を異にするネットワークを自ら設計し実装した
これによりミヤビは完璧なファイアウォールを構築したかに思われた
が、しかし・・・

東京23区内
色を発光しない消えたままの信号機
交差点の信号機はすべて消えている
交差点で信号待ちする車も人も消えている
陽光降り注ぐ日昼にも関わらず幹線道路の交差点にも高速道路に車は一台もない
大通りの歩道を歩く人もいない
ターミナルに乗降する利用客はなく、立体交差の線路上を走る電車もない
東京は死んだように静まりかえっている

作品名:東京メサイア【初稿】 作家名:JAY-TA