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積 緋露雪
積 緋露雪
novelistID. 70534
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夢幻空花なる思索の螺旋階段

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――さう云へば私は最早Televisionを見なくなつて久しいが……本能的に魔人『多頭体一耳目』になることを察知してTelevisionを見なくなつたのかもしれないな……。


雷雲

彼は幼い頃から屋根に寝そべつて時々刻々とその姿を変容させる雲を見続けてゐる何とも名状し難い心地よさに包まれるその時間を愛して已まなかつた。
特に雷雲が遠ざかる時の鬱勃と雷雲に雲が次々と湧いては、上昇したために冷えた気団が纏ふ雲が雲団に崩れ沈む様をずうつと眺めてゐる時のその雄大な儚さが何とも堪らなく好きであつた。
或る日、彼は特別強い突風が吹かない限り欠かせた事が無い激烈に変化する気候の不思議に魅了されて眺めずにはゐられない雷雲の去来の全てを部屋の窓を開け放つて眺め始めたのであつた。
先づ、斥候の雲として龍のやうな雲が中空を滑るやうに横切り始めると彼は最早空から目が離せなくなるのであつた。そして、灰色の氷山のやうな小さな暗雲が次第に群れを成して上空を流れ行く段になるともう直ぐ空が一変する瞬間が訪れるのを彼はわくわくしながら待つのである。
それは雷神が巨大な甕に薄墨をどくどくと注ぎ込みその巨大な甕が薄墨で一杯になつたところでその甕の薄墨を空にぶち撒けるやうに薄墨色の暗い雲がさあつと空一面に一気に拡がる瞬間の息を飲むやうな迫力に圧倒されたいが為のみである。
辺りが夜の闇に包まれたかのやうに真つ暗になると雷神の本領発揮である。きらつと暗雲の何処に閃光が走ると
――どどどどど~ん。
と腹の底まで響き渡る轟音が此の世を覆ひ包む。
時には稲妻が地上から暗雲へ向けて這い登るその雷神の大交響樂は何時見ても凄まじいものであつた。すると、その時不意に彼は奇妙な感覚に襲われたのである。
――睨まれた! 
その瞬間であつた。一閃の稲妻が地目掛けて駆け落ちた時、蒼白い小さな小さな閃光がこつちへ向かつて疾走して来たのであつた。その時Radioからワーグナーの「ワルキゆレの騎行」が流れてゐた。
その蒼白い小さな小さな閃光はRadioのAntenna(アンテナ)の先端に落ちたのであつた。すると、「ワルキュ―レの騎行」は突然大音響で鳴り響き雷神の大交響樂を更にその迫力が鬼気迫る何とも凄まじいものへと変貌させたのであつた。
それからである。稲妻が次々と閃光を放つては轟音を轟かせこの世を縦横無尽に駆け回り始めたのである。
――ぼとぼとぼと――
豪雨の襲来である。
その日の雷雨は記録的な降雨を記録した物凄いものであつた……。


後ろの正面

先づ、次の文章が何のことなのか……謎謎である。
『宇宙を普遍的に支配する法則、宇宙の基本的なBalanceは、始終、破られてゐる。Energie(エネルギー)保存則を無視して、真空から、電子や陽子のやうな物質が――まるで手品の空つぽの帽子から鳩や兎が飛び出すやうに――ポンポンと出て来るのである。これを「真空の揺らぎ」と呼ぶのであつた。但し、このやうな奇妙な現象は、観測者(主体)が観測してゐない時にしか起きない。一旦、無から生成された物質は、観測者(主体)が――周囲が――Unbalanceに気づく前に、無へと直ちに回帰してしまふ。結局、無から飛び出した電子や陽子たちは、観測者(主体)の眼には、「存在してゐなかつた」ことになる。』――引用(『本 読書人の雑誌 2007年6月』【講談社】~<とき>の思考――大澤真幸著:「独裁者という名の民主主義」~(一部私が変更)
上記の記述には大澤真幸の理解不足が散見されるが概ね正しいとして、さて、何のことなのか解るだらうか。
先づ科学関係、それも物理学関係の事だとは解ると思ふが、しかし、科学者の間では上記の引用が「常識」なのである。
さう、量子力学のことである。量子力学における現象は一般の常識を越えた事がしばしば起こるが、上記の引用は彼のアインシゆタインが生涯受け入れられなかつた量子論の基本の基本の考え方である。アインシゆタインでさへさうなのだから一般の人々にとつては尚更受け入れられない考え方である。
一言で言ふと私が自身で見えない私の背中では上記の引用の摩訶不思議としか言へない「現象(?)」が常に起こつてゐることになる。
――はつはつはつ、可笑しくて仕様が無い……
さて、しかし、ここが大きな問題である。上記の引用が科学者の「常識」といふ事が――空恐ろしくて悪寒が体を走る――「文明」の基本の基本にある考え方なのだ。
――逃げろ! 
さう、文明から即刻逃げなければ観測者にされた主体はこの世の「文明世界」で弄り殺され兼ねないのだ。
――奇妙奇天烈な『文明』から……早く、早く、逃げろ!
アインシゆタインの一般相対性理論と量子論が「統一」された「大大統一理論」が理論物理学の世界で確立されない限り狂気の沙汰としか言へない「文明」から逃げる外、私たち一般の人々が「文明」に弄り殺されずに生き残る術は今の所……無い。
――誰か吾を助け給へ……。
童歌の「かごめかごめ」
    籠目籠目
    籠の中の鳥はいついつ出やる
    夜明けの晩に鶴と亀がすべつた
    後ろの正面誰


鏡面界

副題******************** **************************************
Pianist ハロルド・バツド(Harold Budd)の静謐な演奏が白眉な、Ambient Music(環境音楽)の創始者であり、現在ではClassicの現代音楽家とも目されるブライアン・イーノ(Brian Eno)の美しき1980年の作品「 Plateaux of Mirror 」(邦題:鏡面界)を聴きながら……
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追記
イーノの作品で私はNASA制作の映像作品のSoundtrack盤「APOLLO(邦題:アポロ)」が一番のお気に入りである。
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万華鏡を覗いてゐるとその変幻自在で色鮮やかな千変万化する鏡面世界は私の思考を無理矢理にでも宇宙に誘(いざな)ふのである。
――Black hole(ブラつクホール)……
最近、Black holeは存在しないといふ新説が発表されたが、ここではBlack holeが存在するものとして話を進める。
さて、光すら遁れられないBlack hole内はその名に反して眩いばかりに光り輝く鏡面世界なのではないかと最近、特にさう思ふ。銀河の中心域の輝きを見ると尚更さう思へてくるのである。
――Light-shining hole……
唯、シゆヴァルつシルト半径または重力半径と呼ばれるBlack holeの境界域のみ漆黒なのであつて、仮にその境界域を鏡面界と仮定すればBlack holeは万華鏡と同じと考へられなくもないのである。
――もしかすると銀河の中心域もまた鏡で出来た『林檎宇宙』の縮図なのかもしれない……