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積 緋露雪
積 緋露雪
novelistID. 70534
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審問官第二章「杳体」

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――つまり、私は、つまり、思惟がEnergie(エネルギー)に、つまり、変換可能な、つまり、《もの》と、つまり、独断的に看做して、つまり、ゐるが、さて、つまり、此の世に《存在》する、つまり、森羅万象は、つまり、Energieに還元出来ない、つまり、《もの》の、つまり、《存在》を、君は、つまり、認めるのかい?
 と、私はNoteに書くと、文学青年の丁君が、
――そもそもEnergieって何の事だね?
 と私に問ふたのであった。私はすかさず、
――つまり、意識さ。
 と、Noteに書くと、雪が、
――一体全体あなたは何のことを話してゐるの?
 と、目を爛爛と輝かせながら私に訊いたのであった。其処で私はNoteに、
――つまり、私達が、つまり、簡単に、つまり、意識と、つまり、呼んでゐる《もの》が、つまり、一体、つまり、何を、つまり、意味してゐるのか、つまり、己に問ふてゐるのさ。
 すると猊下たる丙君が、
――「黙狂者」の君にとっては、万物に意識は宿ると看做したいのだらう。さうする事で君はやっと君自身の《存在》に我慢出来るのだらう。つまり、さうする事で君は君に喰はれる為に殺された《もの》の死肉の重さが意識だとする事で、やっと、君は君の《生者》たる《存在》に我慢が出来るのだらう? 違ふかね?
――うぅぅぅぅあぁぁぁぁああああ~~。
――まだ、あなたには誰とも知れぬ他人の亡骸の幻が見えるのね? そのあなたがいふ《意識≒重力》と思惟する事で、《吾》は救はれる?
 と、雪が、目は相変はらず爛爛と輝かせながらも、その中に一つの暗い影がすうっと通り過ぎるのを私は見逃さず、そして、雪は痛痛しい心でもって私を凝視しながら、さう言ふと、丙君が猊下といふ綽名と言はれる所以たるに相応しい問ひを発したのであった。
――君が肉を噛み切る時の、その不快にして幸福なその一瞬を堪へ得るのに、《意識≒重力》でなければ、君は一日たりとも料理された《他》の死肉を喰らふ事が出来ず、その何とも知れぬ底無しの躊躇ひに《吾》を抛り出して、君は断食を直ぐでも始められる危ふさが君といふ《存在》には属性としてあるのだが、つまり、君は《他》の死肉の重さを意識へと還元する事でやっと料理を喰らふ事が出来、さうすることで辛うじて《吾》の《存在》を渋渋受容してゐるのだらう? 違ふかね?
――つまり、さういふ事だ。しかし、つまり、《吾》たる《存在》は、つまり、土台、つまり、《他》を、つまり、喰らふ事で、つまり、どうにかかうにか、つまり、《吾》なる《存在》を、つまり、存続させてゐるが、つまり、それでも、《吾》が、つまり、《存在》する事を、つまり、選ぶのであれば、つまり、《吾》は、つまり、腹を括って、つまり、《他》の、つまり、死肉を喰らふしかない。つまり、それは、つまり、此の世に、つまり、《存在》する、つまり、森羅万象にも、つまり、当て嵌まる事で、つまり、何かが《存在》するといふ事は、つまり、何かの《存在》を阻んでゐる。
――でも、《吾》は如何なる《もの》でも《吾》といふ《存在》に我慢してゐる事を、君は軽んじてゐるんぢゃないか?
 と、ぽつりと文学青年の丁君が呟いたのであった。すると、雪が、
――さうだわ。《存在》も《非在》も共に懊悩の中で《存在》してゐるんだわ。ねえ、あなたは此の世の摂理は不合理だと思ふ? それとも合理だと思ふ?
――つまり、両方さ。つまり、何故って、つまり、《吾》の有様によって、つまり、合理でも、つまり、不合理でも、つまり、どちらにもなり得るからさ。
 と、私がNoteに書くと、雪は、相変はらず目は爛爛と輝かせながらも、凌辱されたことでずたずたに裂かれていた心を私に受け止めてほしいかのやうに心を私に投げ出して、
――それぢゃ、《他》が《吾》を凌辱する事が合理であるか、不合理であるかは、《吾》が決定するのね?
――ああ。つまり、君は、つまり、その事を、つまり、《他》が《吾》を凌辱したことを不合理として、つまり、嫌悪する摂理がある。つまり、《吾》にとって、つまり、《他》は、つまり、《吾》にとって、つまり、或る時は食料になるが、つまり、それ以外では、つまり、《他》は何処まで行っても得体の知れぬ、つまり、化け物と同じさ。
――それでも、私に対する不浄の観念は何時まで経っても消えない《もの》よ。
――つまり、ねえ、つまり、雪、それ以上は語らなくて、つまり、もういいんだよ。つまり、君は今まで、つまり、その《吾》に、つまり、よく堪へて来たんだからね。
 と、私は雪の凌辱された場面を実際に眼前に見るようにその夢幻空花なる有様を見続けながら、私がさうNoteに書くと、雪は、ぼろぼろと目から涙を流し、私をぢっと凝視しながら泣き出したのであった。と、其処で、この重重しく一変した空気を換へるべく、ヴァン・ゴッホ気狂ひの甲君が私と雪との間で交感してゐるその苛烈にして沈んだ心の状態を一気に吹き飛ばすやうに下らない地口を言ったのであった。
――飛んで分け入る奈津子の無視。それに三輪與志ならぬ皆善し、なっちって。
――ふふっ、御免なさい。私の事を気遣って下さり有難う御座います。
――誰も己の《存在》を苦虫を噛み潰すやうにその《存在》を受容してゐるのが、普通、《存在》する《もの》の道理であり責め苦なのさ。
 と猊下たる丙君が自分で吐いた言葉を呑み込むやうに言ったのであった。其処で私はNoteに、
――雪、つまり、君は、つまり、自虐する、つまり、道理は、つまり、これっぽっちも、つまり、ないんだからね。つまり、そのことを、つまり、忘れずに。つまり、ほら、つまり、笑って。
――どうも有り難う。あなたにかかると何もかもお見通しなのね。
 と、雪が泣きながら微笑むと、猊下たる丙君が、
――君たち二人に通う何とも言へない心の交感は、第三者から見ると超=自然的なのだがね。しかし、何となく君が「黙狂者」になっちまったのが解かる気がする。つまり、君の感受性が何かにつけても途轍もなく過敏に働くために、君は何事も発話出来なくなってしまった。多分、君には非科学的な感覚が生じてしまひ、最早喋る事が苦痛でしかなくなってしまった。さうだらう?
――ああ。つまり、さういふ事かもしれぬ。つまり、しかし、私にも、つまり、こればっかりは、つまり、如何ともし難いのさ。
――それでもかれは「黙狂者」である事を理不尽とはいへ、何の文句も言はずに受容する外ない、その《存在》自体がどん詰まりにある証左として、彼は「黙狂者」にしか為り得なかった己を受け容れたのだ。
 と、猊下たる丙君が再び自身の吐いた言葉を呑み込むやうに言ったのであった。
――ねえ、あなたにとって自然の摂理って不合理な《もの》、それとも合理な《もの》のどちらかしら?
 と、雪がまだ瞳から零れ落ちる涙を手で拭ひながら私に訊いたのであった。其処で、私は、再びNoteにかう書いたのであった。
――つまり、私にとって、つまり、自然は、つまり、元来、つまり、「先験的」に、つまり、不合理でしかない。
 すると、雪が、
――どうしてあなたにとって自然は「先験的」に不合理なのかしら?
――つまり、私が、つまり、此の世に、つまり、《存在》するからさ。