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時間の三すくみ

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和6年3月時点のものです。時代背景と時代考証とは、必ずしも一致するわけではありませんので、ご了承ください。一種のパラレルワールドでしょうか?

                 友達というもの

 最近になって、夜遊びが増えてきたように感じる秋月正人だったが、彼が夜遊びをするようになったきっかけは、
「大学時代の友達」
 だったのだ。
 その友達は、東京で就職したので、数年間、あまり連絡を取ることもなくなっていた。
 大学卒業してからというもの、最初の頃は、
「お互いに仕事に慣れる」
 という時期が必要だということで、敢えて連絡を取らないようにしていた。
 それは、お互いに、気を遣い、遠慮していたということであるが、そういうことをしていると、結局お互いに、連絡を取るということが減ってしまい、お互いに、
「連絡を取ることが億劫になる」
 ということになるのだ。
 そういう意味で、
「下手に相手に気を遣うということは、自分の行動範囲を、凍結させてしまうことになるのではないか?」
 と感じるのだった。
 それを分かっていなかったからか、
「何かのきっかけがなければ、彼とは疎遠のままだろうな」
 と思っていた。
 大学時代は、毎日のように会っていたので、別に、
「特別な時に特別なことをしなければいけない」
 ということはなかった。
「毎日をお互いに、自然に過ごす」
 ということがモットーだったので、
「誕生日」
 だろうが、
「何かの祝い事」
 だろうが、わざわざ二人で、お祝いをするというようなことはなかったのだ。
 だから、年賀状を送るなどということもしんあいし、連絡先のLINEは交換していたが、
「待ち合わせをする」
 という時以外、連絡を取るということはほとんどなかった。
 そんな、
「ほとんどない」
 という中で、一番多かったのは、
「お互いに相談事があった時」
 ということであろう。
 お互いに、何か相談事があった時は、
「最初から連絡を取るだけではない、実際に遭って話をしないと、埒が明かない」
 ということがほとんどだったので、結局、連絡に利用するのは、
「待ち合わせ」
 ということになるのだった。
 大学2年生の頃までは、結構、お互いに連絡を取り合ってもいたが、それ以降は、、あまり連絡を取らないようになった。
「なぜなのか?」
 と言えば、お互いに、同じ理由だったのには、お互いにびっくりしていた。
 というのは、
「お互いに、相談しても、結局、最後には自分で決めることになるので、よほどのことがないと、相談しても、時間の無駄だということに気づいたからだ」
 ということであった。
 なるほど、確かに、
「時間の無駄」
 ということはいえるかも知れない。
 しかし、
「時間の無駄」
 ということを、分かっていても、相手に言われるとカチンとくるというもので、
「自分だって思っているくせに」
 と感じながら、結局は、その言葉を自分で飲み込もうとする自分がいたのだ。
 その友達と最近連絡を取り合うようになったのは、
「仕事で、この街によく来るようになった」
 ということからであった。
 彼の仕事は建築関係の仕事で、この街の再開発に一役買っているということで、月に数日は、この街に滞在していた、
 もちろん、秋月が、この街にいるということは分かっていて、会社の連絡先も知っていたので、連絡を取ってみた。
 お互いの会社はまったく関係のないところなので、普通に会うことに、何の憚りもなかったのだ。
 秋月も、
「連絡がなかなか取れずに、お互いに気まずくなっていることを気にしていたので、相手から連絡を取ってくれるのは、ありがたい」
 ということであった。
 連絡をもらうと、さっそく会いに行った。
「いや、久しぶりだな」
 と気さくに秋月が話しかけると、
「ああ、そうだな。よく来てくれたよな」
 といって、友達は自分から連絡を入れてきてくれたのに、どこか他人行儀で、苦笑いをしている気がした。
 しかし、すぐに打ち解けたのを感じると、
「ああ、そういえば、彼には大学時代からそういうところがあった」
 というのは、初対面の相手に対しては、結構緊張する方で、慣れてからの態度にギャップがあったのだ。
「俺たちは別に初対面でもないのに、それどころか、旧知の仲ではないか?」
 と思っていた。
 ただ、
「元々緊張するタイプだ」
 ということで、大学時代にその性格が災いし、
「第一印象で、彼とは、その時一回きり」
 という人も結構いた。
 しかし、一度慣れてしまうと、これほど気さくな人間はおらず、
「その対応のうまさに、いつのまにかまわりの人間が、巻き込まれ、彼のペースに引き込まれている」
 ということは、当たり前ということになっているのであった。
「初めて知り合った時、最初に声を掛けてきたのはお前だったんだぞ」
 というと、友達は、
「えっ、そうだったのか?」
 という。
 そもそも、彼の存在は知っていて、皆から、彼の評判も聴いていた。
「結構ぶっきらぼうなので、俺は合わないな」
 といっている人もいれば、
「ああ、彼は本当に人に気を遣うのがうまいからな」
 という人もいる。
 それぞれの話を聞いている限り、
「まさか、同じ人のことを言っている」
 とは思えない。
 実際に、話をしてみると、
「なるほど」
 と感じさせられた。
「俺もあの最初に遭った時、半分は、合わないと思ったんだっけな」
 と思いだすことができる。
 その時のことを思い出すと、再会した時の、彼の緊張した面持ちがダブって感じられるようになったのであった。
 大学時代、友達はたくさん作ったが、大学時代を通して、彼のような友達は皆無だった。
 大学時代に、それを本人にぶつけると、
「俺も同じことを思っていたのさ」
 というではないか、
 そういって笑っていたのをいまさらのように思いだすと、
「大学に入ってから、結構最後の方になって仲良くなった仲だったか」
 と思うと、
「大学で仲良くなった人とは、その後の付き合いということを考えると、最後のほうで仲良くなった人が多かった気がする」
 と思うのだった。
 それは、入学当初の友達というと、
「とにかく、最初は友達をたくさん作る」
 ということが目的だったので、声を掛ける相手を片っ端から、
「友達」
 として認識していた。
作品名:時間の三すくみ 作家名:森本晃次