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テッカバ

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 赤坂はムカつく奴だけど言ってる事は正しい。殺人事件が実際に起きちゃったのにそれをネタにして賭けだなんて……私には理解できない。
 何も言えない私たちに唄方くんは淡々と続けた。
「期限は今から三十分後です。それまでに各受験者は現場を調べて自分なりの真相を探しておいて下さい。それと祐善さん」
「はい! これだよね」
 唄方くんの後ろから出て来た奈々子が私と京橋刑事、赤坂に同じ書類を渡す。
「この科学色の小悪魔、奈々子ちゃんが科学捜査で調べた結果の報告書。資料として渡しておくね」
「……随分分析結果が出るのが早いな」
 帽子の位置を直しながら信楽警部が言う。
「鑑識の連中でもまだ報告書を出してないってのに」
「鑑識? この科学の申し子と一般ピープルを一緒にしないでよ! おじさん」
 奈々子は得意気にピースをした。
 本当、警部の言う通りこの子は子供にしか見えないんだよな。胸以外。
「とにかくそう言う事なんで、逃げ出そうとしたっぽいあの塾講師の人にも伝えといて下さいね」
 そう言うと唄方くんは一人で劇場を出て行ってしまう。
 残された私は奈々子の報告書を持ったまま黙って彼の後ろ姿を見送った。


「ねえ奈々子、どう思う?」
 仕方なく神田さんの死体を調べる為にステージに上がる。暇そうな奈々子も一緒だ。
「私も赤坂の言う通り九谷さんがやったとしか思えないんだけど……」
「でも、ミッチーは違うって言ってたよ?」
「うん、そうなんだけど……」
 私は丁寧に手を合わせてから神田さんの死体の前にかがみこむ。大分乾いたのか血の匂いは薄まってきたようだ。
 別にさっきから遠目に見ていた時となんら変わらない。ナイフの刃が横向きで胸元に刺さっているだけ。ダイイングメッセージらしいものもない。
「そりゃ心臓刺されたら即死でしょ。叫ぶ暇すらなかったと思うよ」
 そう言ってあくびをする奈々子は暇そうだ。
 私は奈々子の報告書を取り出して死体と見比べる。
『死体に付着した血液はルミノール反応により本物と血糊とが混ざっている事を確認。凶器のナイフに指紋は無し。その他不自然な事は無し』
 要約するとこんな感じ。実に簡潔な内容でよろしい。
 やっぱり黒コートを着ていた九谷さんが私たちの目の前で殺したとしか思えない。でも唄方くんは違うと断言する。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎