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テッカバ

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「その必要は無いんじゃない? だって今は試験中でここは鉄火場だし」
 ……それが警察に通報しないどんな理由になるんだろう?
 なんでだろう? 唄方くんも奈々子も、まるで他人事みたいな扱い方だ。
 目の前で人が死んだってのにこれはないだろうと思っていた時、マイクで拡大された野太い声が聞こえた。
「よく聞け! 会場の野郎ども。この中に犯人が居る!」
 赤坂だった。舞台のど真ん中、神田さんの仰向けで胸にナイフの刺さった死体の横に立ちマイクを握っている。
 彼の言葉に場内がどよめく。
「おい、赤坂の奴まさか謎解きするんじゃないか?」
「本当か。だったら元ナンバー持ちの推理を生で聞ける事になるな」
 僅かな興奮が聞こえ漏れてくる。が、同時に赤坂の宣言は隣の人間が犯人かもしれないという不安を客たちに持たせた。
 赤坂は自分の言葉への反応を確かめながら、続けた。
「俺たち受験者は真正面で犯行を見ていた。そこで俺が犯人に関していくつか気付いた事があるから、それを話そうと思う」
 そう言うと赤坂は近くのディーラーを呼んで、紙とペンを客の人数分用意するよう言った。
 ディーラーたちがそれをゲストに一人ずつ配る。その中に私は男性ディーラーに混じった九谷さんを見つけた。
「あんたらは紙に自分の名前を書け。身元から確かめる」
 赤坂の指示の通りペンを走らせるゲストたち。
 相手は国の要人かもしれないってのに、本当にこの男は態度がでかいな。
 全員が書き終わるのを確認して赤坂はゲスト一斉に立ち上がらせた。
「始まりましたね。赤坂探偵の消去法推理」
 唄方くんがわくわくした顔で言う。
 ――消去法推理?
「彼は現役時代からこの推理法を得意としていました。つまり、ありえない可能性を切り捨てて行くことで残った真実を見つけるんです」
 分かったような分からないような……。
「――さて」
 赤坂の推理が始まった。

「まず、ゲストとしてのIDカードを持ってる者、カードを掲げろ。そうだ。今カードを出してない、つまり誰かとの同伴で鉄火場に入った奴は座れ。あんたらは犯人じゃない」
 赤坂の指示通りにカードを出したのは全体の半分ほど。残りのもう半分が着席する。よく見るとギャンブラーのカードと違って、彼らのカードには赤いダイヤのマークがプリントされている。
「ちょっと! そんな根拠どこにあるのよ!」
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎