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テッカバ

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 “眉間しわ男”こと赤坂さんは前の二人と違って立ち上がる事もなく、仏頂面のまんま「ケッ」と不機嫌そうな声を出しただけだった。本当感じ悪いな、この人。
 しかし、今の紹介で気になる所があった。この人が元ギャンブラー? しかもナンバー持ち? 推理力じゃなく、容疑者を絞め上げて自白させていたのではないだろうか……。
「ラストはエントリーNo.4、黒御簾由佳!」
 そしてとうとう私の番。こういう時は昔から柄でも無く緊張してしまう。
「華の現役女子大生、そんな彼女の最大の武器は持ち前の腹黒さだ! 今日もあの手この手でライバルを苦しめるに違いないぞ!」
 ワーッ、と歓声が響き渡る会場。その中に私はニヤニヤしながら手を振る後ろ髪が逆立った男を見つけた。
 ――後で殺す。
「以上四名が今回の参加者です! 合格するのは一人だけ。みなさんにはいつも通り、誰が合格するかを犯罪賭博形式で予想して頂きます」
 なるほど、この試験も犯罪賭博の一環なんだ。だからこんなに観客が見てる所でやるし、私たちの情報も教える。
 賢いと言うかえげつないと言うか、手段を選ばない組織だな、まったく。
「さて、気になる試験の内容ですが……ん? 誰だね? 君は」
 どうせクイズ大会でもやるんだろう、と私が考えていると神田さんの言葉が止まった。
 顔をあげると、丁度奇妙な格好をした人が舞台袖から私たちのすぐ前を横切って行くのが見えた。
 マスクとサングラスで顔を覆い、黒いレインコートを着てフードまで被ったその人は、ゆっくりと舞台の真ん中でマイクを握っていた神田さんに近づいて行った。
 かなりサイズの大きいコートを着ている為体型から男か女かは分からない。身長は向かいあった神田さんと同じくらい、160センチ代だろうか? だらん、と力なく下げた両腕が不気味だ。
 ――この人誰だろう? スタッフか何かかな?
 会場も突然舞台に現れた正体不明の真っ黒人間に動揺して、ガヤガヤし始める。戸惑っているのは私だけじゃないようだ。
 そして次の瞬間、私たちは嫌でもその人物が誰なのか、正確に言えば何が目的なのか分かる羽目になるのだった。
 突然力無くぶら下げていた左腕を構えると、袖口からギラリと光るナイフがのぞく。他にも何かが袖の奥で光を反射した気がしたが、一瞬のことだったのでよく分からない。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎