小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

テッカバ

INDEX|28ページ/72ページ|

次のページ前のページ
 

「部屋に入ってすぐ目に飛び込んで来るのは、この証拠品として机に置かれた拳銃。自分たちの所まで来る時に嫌でも目に入るのは壁の弾痕……なのに、あなたはさっき『刺し殺した証拠を持ってこい』と言いましたね?」
 見る見る内にかりんの顔が青ざめていく。冷や汗を額に浮かべながら視線を泳がせ始めた。
 唄方くんに容赦は無い。
「どう見ても“射殺現場”にしか見えないこの部屋で、どうやってあなたは被害者が“刺殺”されたことを知ったんですか?」
 …………。再びの沈黙。
 唄方くんが部屋をいじくり始めた時からずっと私と警部が抱えていた疑問――“これじゃ殺害方法が分からなくなるじゃないか”。
 部屋の模様替えはこの為だったのか……証拠がないかりんを油断させ、犯行の現場に居た事を間接的に自白させる為だったんだ……。
 青ざめた顔で部屋を見渡すかりん。さっきまでの自信は消え失せ、怯えたネズミのような挙動になっている。
「無駄ですよ。果物ナイフ、シャーペン、ホッチキスに至るまで、“何かを刺す”ことを連想させるものは全て机の引き出しに隠しておきました。勘違いしたなんて言い訳は通用しません」
「ひ、人から聞いたのよ! あなたたちと別れた後に別の友達から……」
「何学部何年の何と言う生徒ですか?」
「あなたたちに教える必要なんて無いわ! 確かめようの無いくせに!」
「確かめようならありますよ。さっきから自分の依頼で鉄火場の職員が、この大学の全門を封鎖しています」
「……!」
「あなたが話を聞いたという人の名前とおおまかな容姿を教えて頂ければ、確実にここに連れてきます。さあ、あなたに高槻教授が刺されたと言ったのは何処のどいつですか!」
 さっきの電話はそれだったのか……。
 かりんはもう逃げられない。一見幸運の連続に見える唄方くんの包囲網に完全に絡め取られたのだ。

 事件は解決したけど……こんな結末だなんて……
 私は憐れみの込もった目でかりんを見る。彼女はげんなりと下を向き、何か呟いていた。
 憑き物が落ちたよう、とでも言えば良いのだろうか? 私の知っている純情可憐なかりんでもないし、さっきまでの強気なかりんでもない。
「刑事さん、手錠を」
「刑事じゃなくて警部だが……」
 信楽さんが懐からチャラリと手錠を取り出した瞬間だった。
「こんな結末認めないっ!」
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎