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テッカバ

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 私の不信感を載せた視線も気にせず、唄方くんは元気言った。
「さぁ! 次は現場ですよ」
 何かのバスツアーに来ているような気分だった。



 一階まで下りて、IDカード片手に警官を蹴散らしながら進む。
 現場はもう冷房が切られ、死体も運び出されていた。床に残った血痕と、死体の形を取っておくロープが生々しい。血って結構臭いがキツいのね。
 部屋はまだ指紋を採ってる鑑識さんでいっぱい。信楽警部は疲れたのか、壁際の椅子に座って眠っている。
 またまた頭の中で保留していた質問を思い出したので、ぶつけてみる。
「そう言えば、唄方くんってどうやって部屋に入ったの?」
 かりんの話を聞いてからの私は素早かった。生協で包丁を購入し、二時限目の講義がが始まる時間にはこの研究室の前で見張っていたのだ。その間人の出入りは無かった。
 可能性としてはゼミ生が居なくなってから私が来るまで、つまり一限目の間に部屋に入っておく事だ。
 回答は意外なものだった。
「窓からですよ」
 窓開いてたんかい!
 迷惑そうな鑑識さんを無視して窓際へ行く唄方くん。手袋もしないで窓を開け閉めして見せる。
「ちょっと用事があって、高槻研究室に入れないかな……と思って入口探してたら、ちょうどこの窓の鍵が開いてたんで入ったんですよ」
「普通にドアから入りなさいよ」
「内鍵がかかってたんです。ノックしても返事がないし、忍びこもうと思って。
 ほら、この窓の外って背の高い植え込みがあるでしょ? これなら誰にも見られずに出入り出来ますよ」
 つまり、犯人はそこから出入りした可能性が高いわね……でもそれなら学校中誰でも犯人になり得そう。
 考えがこんがらがって来た私を尻目に、唄方くんは眠っている警部を起こしにかかる。
 警部は不機嫌そうな声を上げ目を覚ますと、唄方くんを私を見てもっと不機嫌そうになった。
「刑事さん、いくつかお聞きしたいのですが」
「刑事じゃなくて警部だ。何だね?」
「司法解剖の結果出ました?」
 唸りながらカバンを開けてファイルを渡す警部。
「凶器のナイフは量販されているもので、購入ルートからの犯人の特定は難しい、ですか……。それから死亡推定時刻は9時から12時、やっぱり随分と広く出ましたね」
「君の言う通り、血の乾き具合程度でしか判断できなくてね」
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎