テッカバ
警部は困ったように唇を歪める。良く見るとこの警部さん、帽子被ってチョイ悪系?
そんな呑気な事を考えていると、信楽警部に唄方くんがまったく予想外な言葉をかけた。
「安心して下さい! 自分には犯人がもう分かっています!」
「嘘……」
「本当かね!?」
「ええ、多分」
多分って……。私と警部が同時に肩を落とす。
「大丈夫ですよ! 上の階に居るゼミ生を呼んで来てください。そうそう、警部と黒御簾さんにはそれぞれお願いしたいことが……」
「唄方くん、一体何をするつもりなの?」
「自分こう見えてお国に雇われたギャンブラーの端くれですからね、探偵が事件の関係者を集める時は、ただ一つ」
人差し指をビシッと立てて、ニヤリと笑う。
「謎解きですよ」
出会ってから数時間、初めて唄方くんが探偵らしく見えた。
まずは警部から、と信楽さんの耳元でごにょごにょと何事か言う唄方くん。警部は一瞬非常に嫌そうな顔をしたが、渋々コートの下に隠していたものを取り出した。
――拳銃だ。警部さんが持ってるからには本物だろう。
「ありがとうございます。なるほど、これが安全装置ですね」
どうやら警部は唄方くんに言われて拳銃を貸したらしい。
バカに武器を持たせると武器より危ない、死んだ祖父がよく言っていた。
その言葉はここに居るバカにも漏れなく当てはまったようで、いきなり彼は壁に向けて銃を発砲した。
パァァァン!
「何やってんだね君は!」
「ごめんなさい! 間違えて引き金引いちゃいました!」
「私に当たったらどうするのよ! 死体が増えるとこだったわよ!」
「黒御簾さんなら歯で止めそうです……」
「何だとっ!」
こんな探偵で大丈夫なんだろうか……。