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テッカバ

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 講義帰りらしく、ペンケースやファイルを抱えた彼女は、清純な女子大学生のイメージそのもの。トラックの荷台の上で片や殴る側、片や殴られる側の姿勢のまま固まっている私たちを、不思議そうな目で見ている。
 気がつけば大声で騒いでいたせいだろう、トラックの上で何をしているのかという具合に人が集まって来ていた。
「おい、そこのねーちゃんとにーさん! 何してんだ!」
 おまけにトラックの運転手まで出てきた。不機嫌そうに眉を吊り上げている。
「ここに停車してくれてありがとうございます! あなたは命の恩人だ!」
 荷台から飛び降り、運転手の手を強く握りしめる唄方くん。
 少々乱暴な握手の後、彼は一目散に人混みの中を逃げて行った。
「あ! 待て!」
 私も唄方くんに倣って車を降り、状況の飲みこめていないかりんの手を引いて後を追う。
 運転手が引き留めようとしたが無視。まだ包丁を隠してないから、警察が騒ぎを嗅ぎつけてくると面倒だ。



「……納得行きません」
 唄方くんがそう言いながら、皿に盛られた薬味付きの豆腐に醤油をかける。
 他に彼の前にあるのは白米に味噌汁、タダで飲めるお茶と日替わりのお漬物。それだけ。
「何が? 一人だけ豆腐定食を食べてること?」
「そもそも、豆腐定食などというメニューがあるところから謎です」
「学生は基本的に貧乏なの。そんな学生を応援する生協食堂には、リーズナブルでヘルシーなメニューがあって然(しか)るべきでしょ?」
「安くて味気ないという見方も出来ますが?」
 ここは、昼時になって混み合っている生協の学生食堂。ちょっとした体育館ぐらいある長方形の空間に、白い長テーブルと丸椅子がズラリと並べられている。
 集まった学生たちは食べ終わっても、お互いに愚痴を言い合ったり雑談したり。それでも席が足りなくなることは無いくらいにこの学食は巨大だ。ちらほらと警察関係者の姿も見える。刑事だって人間だもんね。
 あの場を逃げ去った私とかりんは、この学食に入ろうとしている唄方くんを発見、即座に捕獲した。彼としてはうまく人の群れの中に隠れるつもりだったのだろうけれど、残念ながら彼は野球部が買ってきた大学ロゴのTシャツを着ていたので、人の中だとむしろ目立つ。
 丁度お昼時だし、ご飯をおごればさっきのセクハラを許してやることにし、有無を言わせず財布を取り上げた。
作品名:テッカバ 作家名:閂九郎