テッカバ
「まったく……勘弁して下さいよ、黒御簾さん……」
唄方くんの虚ろでジメッとした目が私を見つめ返してくる。目は死んでいるが何故か体の方は無事のようだ。
「偶然丁度真下にトラックが停車したから助かりましたけど、普通死にますよ……」
さっき、私が唄方くんの背中を押した瞬間にはそこに無かった貨物トラックの荷台の上に彼は居た、仰向けで大の字に手足を開いて。発泡スチロールでも積んでいたのだろう、幌の下の柔らかい何かに体が沈みこんでいる。
ほっとした一方で、ちょっぴりがっかりした私はやはり腹黒いのだろうか?
「どこまで運が良いんだか……」
私は口をポカーンと開けて、風の吹く屋上に一人立ち尽くした。