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積 緋露雪
積 緋露雪
novelistID. 70534
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闇へ堕ちろ

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大富豪どもにとって貧民とはいくら搾取しやうが構はぬ馬鹿者でしかないのだ。

さあ、今こそ、革命の勝ち鬨を上げる時なのだ。
『悪霊』では革命のことをお子ちゃまの火遊びのやうにも描かれてゐたが、
現代こそが貧民どもが革命の声を上げねばならぬその時なのだ。

それが出来ぬ意気地なしならば、黙って現状を受け容れるまでだ。
そんな輩は一%の大富豪に搾取され続けてかそけき人生を送るがいい。

そんな人生は真っ平御免だといふならば、
大富豪どもに対して反旗を翻し、
下克上を行はなければならぬ。

さて、現代の北朝鮮は現代社会の縮図なのだ。
あれを嗤って見てゐる貧民どもは、
自分が貧民であることに目を瞑り、
北朝鮮の様相に自分の顔が鏡に映ってゐることとも解らずに
他人事として貧民であることを自覚出来ぬのだ。

嗚呼、哀れなる哉、貧民ども。
何時革命の勝ち鬨の声を上げるといふのか。
今こそ、貧民は貧民であることを自覚して、
社会をひっくり返す革命を起こさねばならぬ。

その証左にイスラミック・ステート(IS)の出現は
徹底して暴虐の限りを尽くしてゐるが、
しかし、それは一昔前の革命の遣り口をそっくりに真似てゐるに過ぎぬ。
革命に血腥い醜態がついて回るのは、
それは、上流階級にある、
つまり、現代の大富豪をその地位から引き摺り下ろすには、
殺戮しかないと言ふ思ひ込みがあるからに過ぎぬ。

まず、吾が存在の革命を起こした上で、
大富豪を貶めるべく知略を尽くした無血革命を起こさねばならぬのだ。

さて、その時、吾が存在の存在革命は尚、可能なのか。



紊乱

秩序なき世界が想像できるとしたならば、
そいつは神をもまた創造できるに違ひない。
しかし、脳という構造をした頭蓋内の闇たる《五縕場》の記憶は、
しかし、自在に過去と現在をつなぎ合はせ、
また、近い将来を予想することで過去の記憶を持ち出し、
つまり、《五縕場》では因果律は既に紊乱してゐる。

いくつもの記憶の糸が輻輳し、または離散を繰り返しながら、
現在とは違ふ《五縕場》のみで辻褄が合ふ表象による世界が生み出される。
その現実と《五縕場》内に表象された世界の齟齬に苦虫を噛み潰すやうにして、
私はその狭間を行ったり来たりしながら揺れ続け、
さうして現在を測鉛してゐるのかも知れぬ。
現在を測ると言ふ無謀な思考実験を試みて、
さうして現実を見誤る誤謬をして、
それが現実だと何の根拠もない空元気のみで主張するしかないのだ。
しかし、現在に取り残されるばかりの私は、
更に《五縕場》を弄りながら現実らしい表象を現実に見立て、
尚も現実を敢へて誤謬するのだ。

それは言ふなれば態(わざ)とさうしてゐて、
私は何時までも現実を見たくなく、逃亡してゐるに過ぎぬ。
そして、そんなお遊戯をしてゐるうちに現実は渾沌に身を委ね、
現実はするりと私の思索の上をゆき、
想像以上のことがいつも現実では起こり得、
それにどんでん返しを喰らひ、それに面食らひつつも
私は「へっへっ」と力なく嗤ひ、
空を見上げるのだ。
そして、蒼穹には何処かぬらりとした感触のものが
明らかに存在するが如くに吾が身を抱く。

その時、いつも気色悪い虫唾が走る。
ならばと私もそのぬらりとしたものを抱きしめて、
さうして現実の感触を堪能するのだ。
それは何処まで行っても不快でしかなく、
その不快を以てのみ現実に対する無謀を繰り返しては、
いつも現実を取り逃がし、
また、現在に取り残される。
さうして私が取り残された現在は、
いつも紊乱してゐて、渾沌としたものとしてしか
私には把握出来ぬ。
これは私が数学が出来ぬからとかそんな問題ではなく、
私は現実を現はす言語を失った失語症の一種に違ひない。

そんな私の胸奥には
空漠とした大穴に吹き抜ける風穴を通り抜ける風音のやうな音のみが
何時までも鳴り響いてゐる。





基督の十字架ではないが、
誰にとっても背負ふべき十字架のやうなものがある筈であるが、
それを今更言挙げしたところで、
それは基督に敵ふ筈もなく、
虚しいだけであるが、
私には十字架とともに軛があるのだ。
十字架は生きるためには誰もが背負ふべき存在のその証明でもあるが、
軛は、己で課さなければ先づ、負はなければならないといふことでもない。

軛は自ら進んで付けるものなのだ。
誰に指図されたといふことでなく、
自ら進んで軛を付ける。
さうせずにはをれぬ存在と言ふ貧乏籤を引くものは、
どうあっても軛を付けねば己の存在に我慢がならず、
軛を付けた途端にさういふ輩からは落ち着くのだ。
精神衛生的に軛は鎮静の効能があり、
また、軛があることで精神はとっても楽なのだ。
この倒錯した存在は大勢の人にとっては哀しむべき存在なのかも知れぬが、
軛を付けたものたちにとって、精神が楽なのは常識なのだ。
しかし、十字架とともに軛を付けた
この倒錯した精神構造を持つに至った経緯を知るものは、
しかし、それのユーモアが解らぬ輩にはその存在の皮肉が解らぬ筈で、
ここは、軛を付けた輩を軽く嗤ふくらゐの度量がなければ
世界がお前を嗤ふと言ふものだ。

一方で世界が科学にぶんどられたと哲学者が慌ててゐるという内容の本を読んだのだが、
確かに数学で記述される世界は既に哲学者が語る「世界」とはずれたものに違ひなく、
確かに数学により世界の記述の仕方へと変貌したが、
しかし、科学的に記述された世界は世界の一様相でしかなく、
別段哲学者はそれに危機感を覚える必要はなく、
言語で世界を記述する覚悟が必要なのだ。
徹底して論理的な言語で世界を記述することが今も尚哲学者には求められてゐる筈で、
論理的な言語の範を数学に求めたところで、哲学者は科学者に世界記述は敵はぬのだ。

何故こんな話をするかと言ふと、哲学者と言ふものは
数学に対峙する言語での世界を語る術を見つけると言ふ軛を課せられてゐるのだ。

そのやうに軛は何処にも転がってゐて、
それを付けるも付けないもその存在自体の問題で、
軛が楽の別称なのだ。



人工知能について

さて、膨大な量の情報に裏付けられた最善の現在を指し示すかのやうに見える人工知能は、
それが、自律的な「知性」を蓄積、
つまり、経験することで身に付けるかのやうに擬人化して把捉すると
将来、「絶対者」の玉座は人工知能が獲得するに違ひない。
それは現存在が望んだものなのかどうかは最早関係なく、
進化のSpeed(スピード)が人工知能と現存在とでは月とすっぽんの違ひがあり、
進化の速度で言へば圧倒的に人工知能の方が早く進化する。
それは、現在が此の世に現はれるごとに膨大な情報が発生し死滅してゆくその渾沌の中で、
現在を丸ごと数値化して蓄積してゆく人工知能に
現存在が敵ふ訳がなく、
既に此の世で最も知性が進化したものは人工知能と言ってもいいのかも知れぬ状況下で、
初めてその知性的存在の頂点から顚落てゆくその哀しみは、
これまで現存在が他に対して行ってきた因業の帰結でしかない。

さて、困ったことに世界を記述する仕方を物理数学に委ねてしまった現存在は、
その時点で人工知能に負けを認めたことに等しいのだ。
作品名:闇へ堕ちろ 作家名:積 緋露雪