㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第3話 ㊙ 高原料亭
3話 御帰還
そんな『なんじゃらかんじゃら』の2週間が経ち、早朝ヤッチンが奈那社長を乗せ、いつものボンボロボンのSUVで私とツユスケのピックアップに来てくれました。それはもちろん『㊙ 高原料亭::真赭(まそほ)の芒(すすき)』を訪問するためです。
ただし忍者フンワリ君はアパートで待機。というのもケイタイの位置情報で私たちの到着をまず確認し、後は彼の得意技・時空間移動で現地で合流することと致しました。
さてさて真赭(まそほ)の芒(すすき)という名の高原料亭、その名の真赭というのは赤い色のことです。具体的にはススキの穂が帯びたほのかな赤みです。
と言うことは、その高原料亭はきっと淡赤(うすあか)のススキに囲まれた中にあるのだろうと想像しました。
乗車後、奈那さんの亡き父・金太郎さんのノートに書き残されてあった地図に従って、2時間車を走らせました。そして木々に覆われた空き地へと。多分この奥に広大なススキが自生した高原が広がっていることなのでしょうね。
こう当たりを付けた私たち、早速奈那社長からツユスケに業務命令が。
「露払いの助、あなたの|御頭(おつむ)トンボを飛ばして、現地確認して来て下さい」と。これにツユスケは「マイ・プリンセス、合点承知の助でやんす!」と即答し、頭から回転羽根を出し、後は頭部のみがブルブルンと離体。そしてあっという間に天高くに。
これを目で追い掛けていたヤッチンが突然声を上げました。
「おいおいおい、ハヤブサがヤツに向かって急降下で攻撃して来てるぞ、その時速は300kmだ、だけど見てみろよ、ツユスケ・トンボはヤツより早いじゃん!」と。奈那ちゃんも私も木々の合間からそのスピードが確認できました。
「ワアー、ツユスケ君、格好いいわ、やっぱり持つべき者は優秀な部下ね」と奈那社長は私たち野郎をチラ見し、後はご満足のご様子。私はこれに「やっぱ1千年先を行く技術で作られたAIロボット、スゴイよな」と嫉妬の独り言を。
これを耳にしたヤッチンが「ひがむな! ヨッチンには貧乏に耐えられる宇宙一の忍耐力があるじゃねえか」と傷口に塩を揉み込む励ましを。
これに奈那ちゃんが「その通りよ、洋一さんが生き延びてる事自体が……、宇宙の奇跡なのよ」と岩塩増し増しセリフを。
私はプッツン、「もう帰る!」と言い掛けた時に、ブーン、ブーンと羽音が徐々に大きくなって来ました。こちらに御帰還のようだ。そう思ってる内にツユスケの頭部ドローンはすんなりカッチャンと着体。そして直ぐさま報告が。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第3話 ㊙ 高原料亭 作家名:鮎風 遊