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㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第3話 ㊙ 高原料亭

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2話 温もりのある暮らし


 ツユスケさえもが得意の歌を詰まらせ、後はただただ目を丸くしての硬結。
 そして30秒の時が刻まれ、やっと私は口周りの液体をタオルで拭き取り、「忍者フンワリ君、約束を守ってくれたんだ、だけどこんなに早くとは思わなかったよ、ありがとう」と話し掛けました。
 するとフンフンと空中で頷く仕草。そして球体の一部を絞り、人差し指のような形状を作り、なんと……、私の手の中にある缶ビールを指差すじゃありませんか。その上にですよ、人差しフィンガーの先っちょの腹を上にして、『クイクイ』と折り曲げやがるの。
「おいおいおい、フンワリ君、缶ビールをくれってことか?」と訊くと、球体の表面に皺(しわ)が寄り、まるで笑顔に。それからウンウンと頷きはりました。
 ここまで要求されるともう仕方がない。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、球体から突如伸びた手に渡してやると、それを球体表面に作った口へと持って行き、グビグビと。その後空き缶を床にポイと投げ、元の球体に。
 それから暫くすると球体の色合いが少し赤みを帯びて来て、後はプカプカと。いやいや少し違って、ヨレヨレと浮かんでやがるの。
「お前、結構おもろいヤツだな」と私は一旦吐きはしましたが、少々不満。そこで言ってやりましたよ、「おい、フンワリ、礼はないんかい!」と。
 すると忍者フンワリ君、ちょっと頭を下げるような仕草をして……、『変身』!!
 なんとビーナスの森で出会った森の妖精に化けたのですよ。そのフェアリーが羽を羽ばたかせ私の肩へと停まって来ました。
 私は「いいじゃないか、メルヘンチックで」と呟きながら肩の妖精の顔を覗き込みますと……、大、大、大、ビツクリ!
 なんと、なんと、それは奈那ちゃんじゃありませんか。不覚にも私は叫んでしまいました、「奈那ちゃん、大好き!」と。
 それから抱きしめようと手を伸ばしたら、奈那ちゃん妖精はスーと消え、元の球体に戻りやがるの。それからというものは我がボロアパートの一室、その天井近くをフンワリフンワリと浮遊ばっかり。
「阿呆にすな~!」、てな事ではありますが、これは……、実にオモ『チ』ロ~イ!
 こうしてツユスケとフンワリ君との、予想をはるかに超えた温もりのある暮らしが始まったのであります。
 もちろん私が出勤してる間でもツユスケとフンワリ君は予想外に喧嘩もせず仲良くしてるようです。そして帰宅するとフンワリ君はフワリフワリと空中に浮かんでましたし、またツユスケはいつものソーラン節を歌ってたり、電子版将棋に挑戦してたりのお気楽暮らしでありました。