㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第3話 ㊙ 高原料亭
9話 ハテナ~~~???
左に澄み切った池を見ながら、ツユスケ、ヤッチン、奈那社長、私の順、つまり社長を守りながら側道を一歩一歩安全を確認しながら歩き進みました。そして池の中央にある島、そこに天へと伸びる植物は確かに真赭の芒でした。
私が「ああ、あれが池の中心であり、時の回転軸でもあるのかもな」と呟くと、前の奈那ちゃんが「1周60年逆戻りって、昭和にワープするのよね、まだ生まれてなかったわ、だけど何かおもしろそう」と。私は少し不安の中で「そうだね」と返しました。
それでも一歩一歩、そして約1時間掛けて辿り着いたのです、壁が弁柄(べんがら)色の威厳ある日本家屋に。そして大きな木製の看板に『高原料亭::真赭の芒』とありました。
「ここだわ、私たちが訪ねてみたかったのは、さあ、『レッツラゴー』!」
こう言い放って、奈那社長は先頭に立ち、玄関へと続く門道(かどみち)をさっさと歩き進まれました。私たちはその度胸に呆れながらただただ背後から付いて行くだけでした。そして大きな格子戸を躊躇(ちゅうちょ)なくガラガラと開けらたのです。
するとどうでしょうか、玄関の畳の間に銀キツネ似、きっとコンコン・サピエンスの女将(おかみ)さんなんでしょうね。
その着物姿は大変上品で、まず手を付いて畳にちょっと尖った口先が付くくらい深々とお辞儀をされました。そして仰られたのです。
「ようこそ、奈那お嬢さま、お父上からはいつか娘が訪ねて来るだろう、その時はよろしくと頼まれておりました、やっとお会い出来て光栄でございますわ」
これに奈那社長が「ありがとうございます、短い滞在ですが、よろしくお願いします」と返され、全員深々と頭を下げました。これを受けて、女将は「さっ、真赭(まそほ)のお部屋にご案内させてもらいます」と廊下を先に歩かれました。
もちろん私たちは追い掛けたわけですが、背中越しに女将さんがサラッと仰られたのですよね。「お連れ様がお待ちでございますよ」と。
これに私たち全員、ハテナ~~~???。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第3話 ㊙ 高原料亭 作家名:鮎風 遊