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犯罪という生き物

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 ということで、その原因として、
「証言というものは、どんなに似たものであっても、若干それぞれに違うものである。だから、その小さな違いを見つけ出すことで、そこから、一つ一つの小さな真実を見つけ出し、最終的に、大きな真実に行き当たることで、一本の線にすることが当たり前だ」
 という
「一本の事実」
 を確定させるということになるのだろう。
 それを考えていると、
「何が事実なのか?」
 という霧が立ち込め、そこに、分からない影が次第に大きくなることで、事件の真相に近づけていないと思っているのであった。
 ここで
「真相」
 というものが出てくるが、これが何かというと、しいていえば、
「真実と事実の間」
 といっていいのかも知れない。
「事実を重ねたものが、真実」
 ということになるが、その過程において出来上がるものが、真相である。
 この真相は、いくつもあるものではないが、事実を重ねなければできるものではなく、警察の仕事はこの真相を究明するということになってくるのだ」
 そして、警察はその真相から、
「さらに真実を見つけ出さなければ、事件は終わったとはいえない」
 と判断し、警察が、証拠であったり、その時の全体的な状況を判断し、
「公判を維持できる」
 と考えた場合、起訴することになるのだ。
 検察としても、
「起訴して、裁判になったはいいが、結果、負けてしまう」
 ということになると、自分のことはおろか、警察組織というものに、泥を塗ることになってしまい、これからの警察の捜査がやりにくくなるということで、
「警察の権威」
 というものを地に落とすということになってしまうであろう。
 それだけは避けなければならないということで、検事という仕事も結構辛いところがあるといえるだろう。
 しかも、相手は弁護士である。
「依頼人の利益を守る」
 ということが、何といっても最大の仕事であり、それが一番のモットーであるという弁護士は、もちろん、真実の探求が一番大切なことだということは分かっているのだろうが、それでも、
「真実というものが、依頼人の利益につながらない」
 ということであれば、何としてでも、依頼人の利益を守る方に舵を切らなければならず、結局、
「事実よりも、依頼人の利益を大切にする」
 ということで、
「ウソもつかなければいけない」
 というわけだが、それは、
「ウソではなく、詭弁」
 ということになるだろうが、それも仕方のないことだ。
 きっと弁護士も、
「ウソではなく。詭弁」
 ということに苦しんでいるかも知れない。
 その心の葛藤から、ひょっとすると、
「曖昧な時点で、うまく事件を治めよう」
 としてくるかも知れない。
 そのことが、弁護士や被告にとって、そのような結果になるのかということは、裁判官の裁量にもよることであろう。
 今回の事件は、正直分からないことが多かったところに、
「一人の鶴の一声を浴びせるに十分な証人」
 というのは現れた。
 この証言というものは、実にタイミング的には衝撃的なタイミングだといってもいいだろう。
 この証言が出てきたことで、桜井刑事は、モヤモヤしていた感覚がまたしても、
「殺人事件」
 という考えに傾いていったのだ。
 しかも、まだ何も確証めいたものがなく、
「証拠を集めている」
 という状況だった頃に戻ったかのようで、
「時を戻す」
 ということは、
「一度通りぬけた場所を、もう一度通るということで、一度目には感じなかった事実がさらに出てくる」
 というものだ。
 その時、
「前の事実と、感覚的に違って見える」
 ということから、
「一つであるはずの真相が少しブレてきた」
 と感じるようになってきた。
 そして、再吟味を自分の中で行うと、いくつかの、
「自分の中での解釈の違いが出てくる」
 ということだが、これが二度目ということになれば、以前に達した真相というものが、何倍にもなって、真相というものが厚く、さらに
「激アツが、鉄板となってくる」
 と感じられた。
 激アツというのが、
「真相に一番近い」
 というものであり、これが鉄板ということになると、さらに、
「真相というものを飛び越えて、真実の確定」
 というほどのもので、当たりは確定しているうえに、その先のプラスアルファというものが、
「真相の数倍」
 という意識を植え付けることになるということになるのだろう。
 それを考えると、
「時を戻すことが、鉄板を呼ぶ」
 ということだといえるであろう。
 証人がいうには、
「彼女には、明らかにストーカー行為をする男性がいたんです、その人のことをどうして、警察は捜査しようとしないんですか?」
 というのであった。
 警察とすれば、
「いろいろな人に証言を求めたんだけど、ストーカーの存在というものはおろか、彼女が誰か男性を付き合っているというような話は出てこなかったんですよね」
 というと、
「そうなんですか?」
 とその友達を名乗る女性は、それを納得できかねるかのように答えた。
 それは明らかに、自分でもびっくりしている話に、戸惑っているかのように思え、桜井刑事の目には、
「信じていた友達である被害者の新藤かすみが、どこか信じられない」
 という感覚になってきたかのようだった。
 しかし、その証言を元に、桜井刑事も、
「もう一度考え直してみないといけないかな?」
 と感じた。
 それは、どこかぎこちないと思わせる、何かがあったのだ。
 かすみは、
「自分で立てたこの計画を、ある意味、自信を持っているからこそ、実行したのだろう。まさか殺されるとまでは思っていなかったのかも知れないが」
 と、桜井刑事は、この事件の動機に、
「被害者であるかすみが、ほう助したのではないか?」
 というところまで感じているようであった。
 ほう助というのは言い過ぎかも知れないが、少なくとも、どこかに、
「狂言」
 というものが孕んでいる。
「そう、どこかが狂っている」
 と感じた。
 だから、
「理路整然とした推理」
 を展開する桜井刑事と、
「事実、真相、真実」
 というものを理解し、
「真相を真実に近づける」
 ということのために、
「効果的な事実をぶち込む」
 という方法を取った被害者は、それだけ、
「自分にストーカーがいる」
 ということを思わせて、警察を翻弄しようと思ったのだろう。
 その真相ともいえる動機が彼女のどこにあるのかということは、
「実際に本人が死んでしまった」
 ということだから、永遠の闇に消えてしまい、
「永久の謎と化してしまった」
 ということになることだろう。

                 大団円

 この事件の裏には、表に出てきた、
「恋愛の縺れ」
 というものが、いかに影響してくるかということであった。
 それは、ろうそくの炎のように、ちょっとした風でたなびいているというようなものであり、
「絶えず静止せずに、揺らめいている」
 ということだ。
 だから、時を刻んでいるその時々で、別々の顔を見せ、そのどこでとらえるかということで、
「真実というのは、無限に存在するのではないか?」
 ともいえるのだ。
作品名:犯罪という生き物 作家名:森本晃次