小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ススキノ レイ
ススキノ レイ
novelistID. 70663
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

メイド女房アフリカ滞在記

INDEX|29ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

 案の定、彼は出かける時間を過ぎてもまた迷い、何度も「どうする?」と聞いたのだが、美琴は「あなたの判断に任せる」としか答えなかった。
 「坂田さんには行くとか言ってるの?」
 「昨日婦人会で会ったとき、明日食事会があるみたいよ、というから、あー、そうなの、としか答えなかったわよ」
 「やっぱ行くかあ」
 この問答を何度か繰り返し、ついに正弘は
 「やっぱ一人で行く」と決断した。出かけ間際に振り返り
 「エルディオさんの所へでも遊びに行く?彼女がおいで、って言ってたよ」(それ先に言ってよ)
 「あら、そうなの?だったら行こうかな。来ていいって?」
 「車どうしよう」
 「そっか」
 「やっぱ二人で行くか?」
 「車は戻してもらって、私を送らせてからレストランに戻して、帰りに拾ってくれればいいわよ」
 「そうか、じゃ、そうしよう」
と言って、一旦ドアの外に出たにもかかわらず、再び階段を上がって来てベルを鳴らす。やっぱりねえ、と美琴は思う。
 「どうしよう、やっぱ二人で行くか?」(何を今さら)
 「一人で行くって決めたんでしょ。行けばいいじゃない。私はエルディオさんの所のほうが楽しいわ」
 「じゃ、行ってくる」
と、ようやく出かけたのだった。

 その後、エルディオさんにこれから伺う旨電話したところ、実はエルディオさんが「おいで」と言ったのではなく、正弘が「今夜妻を一人で遊びに行かせてもいいですか?」と頼んだという。
 綾川夫妻は坂田夫妻と会食する、ということを事前に知っていたエルディオさんは「何を言ってるんだろう?」と思ったらしいが、知らんふりをせざるを得ないので、「どうぞ」と言ったのだそうだ。
 そして一体どちらなんだろうか、と先ほど別件で綾川家に電話し探りを入れたのだが、その時点で美琴はエルディオさん宅訪問など念頭にないのだから、「今夜お邪魔します」も何も言わなかったわけで、したがってエルディオさんはこれは綾川夫妻二人そろって出かけるのかな、と判断。近所の知り合いの所に出かけようとしていた矢先だったらしい。
 つまり、正弘は前々から坂田夫妻との会食には美琴を同伴せず、エルディオさんの所に行かせようと計画していて、でも土壇場まで最終決定ができなかったということになる。
 ああ、ややこしい、神経が疲れる、と美琴はため息をつき、予定が立たなくて困っていたエルディオさんにも申し訳ない思いだった。

 結局美琴はエルディオさんの所へ行き、彼女が行こうとしていた近所の東京物産の四ツ木社長宅へ一緒に行くことになった。
 ドライバーに「これからエルディオさんと出かけるので十一時半頃エルディオさん宅に迎えに来て欲しい」というメモを渡し、夫の出先へ帰す。
 四ツ木社長とは初対面だが愉快な人で、夫以外なら誰とでも話せる美琴はすぐ打ち解けた。今日の午後お茶した農水省の高橋さん夫妻も一緒で、皆で飲んでカラオケをやり大いに盛り上がっていた。
 そこへ十時ごろだったか、エルディオ氏から電話が入る。京子さんがやり取りした内容を教えてくれるには、なんと正弘がドライバーに渡したメモの十一時半を十九時半と読み間違い、わからなくてエルディオさん宅に直接来てしまったらしいのだ。それでご主人のエルディオさんが奥さんの京子さんに問い合わせた、ということだった。
 結果的に、正弘も四ツ木社長宅に合流することになった。四ツ木社長、エルディオさん、高橋夫妻、綾川仮面夫婦が集まって盛大なカラオケパーティになる。
 
 正弘は角倉商事の社長宅では未公開の歌をここで散々練習しまくり上機嫌である。上手になってからじゃないと角倉商事の人の前では披露できないのだろう。歌う前にいちいち「これ、初めてなんで」と言い訳してから歌う自意識過剰の夫に、美琴は「彼、お歌上手なんですよ」と最初で最後の皮肉めいたお世辞を言った。(但し、翌日「みんな上手だって言ってたよ」と持ち上げたら「そうだよ、僕は歌うまいんだよ」と肯定されてしまったのだが)
 四ツ木社長はどこからか秘蔵の日本酒を取り出して、皆にふるまってくれ、どうやら一升瓶が空いてしまったようだ。美琴も相当飲んでしまった。
 酔った四ツ木社長は美琴に
 「いやあ、奥さん、アンタはええ子やねえ。一緒に連れて逃げたいねえ」とか
 「亭主が嫌になったらいつでもいらっしゃい。一緒に悪口言って別れなさい、と言ってあげる。そしたら私と…」
などと、事情を知らないため、本人の前でばんばん言ってしまう。美琴は内心かなり面白かった。今更夫がどんな顔しようとかまわないがどうせなんとも思わないだろう。すでに相当酔っぱらっている。
 そんなこんなでようよう午前三時にお開きとなり、酔っ払い運転で帰宅するや爆睡。こうしてラガでのラストナイトは幕を閉じた。



<24.出発当日>


 フライトは夜十時なので夕方家をでればいい。
 こんな日も、正弘は朝九時からテニスの予定を入れていたので起きて朝食を食べでていった。美琴も九時過ぎに起きたが、もろに二日酔いで頭痛とふらつきに悩まされる。
 十時半ごろ戻った正弘は三十分後位に唐突に
 「買い物に行くけど、行く?」と声をかけてきた。
 「え?買い物、わかった、行く」と急遽出かけることになる。
 美琴は今日来る予定だった友人の水倉さんに電話して、出かけるから三時ごろまでいないと告げる。
 今まで買い物で通った道のもっと先へ行ったところにある店舗に行きつくと、正弘は迷わず店に入っていく。美琴は今までこんな店のあることを知らなかった。
 「こっちの布地使ったぬいぐるみとかあるんだよ」
 「ああ、これね。皆が持ってるの」
 「お土産にいいよね。これ買ったげるから。ほら、この犬かわいいんだよ」
 
 ここは他店より安いらしい。ゼリア土産として安くていいもの、を誰かに事前に聞いていたようだ。
 だったら、事前に調べていたくらいなら、もっと前に連れて行ってくれればいいものをなぜ出発当日なのだ。荷物はもはやパツパツに詰めてしまったではないか。と美琴はまたしても彼の優柔不断に振り回されストレスを覚えるが、これでもやっとのことで出せた彼なりの優しさの表れなんだろう、と解釈した。
 まあ、この際だから、色々買ってもらおう。
 
 そしてショッピングの後、昼に何を食べるかで、また迷う。何が食べたい?君の好きなもので、とすぐ言うのは以前は美琴への気遣いかと思っていたが、要するに彼が自分で決められないだけのことだったのだ。
 ようやくフェデラルパレスホテルの中華、と決めたのに、混んでいて入れなかった。美琴はまだ二日酔い気味なのでエスニックはいらない、ということで、中華に落ち着いたのだが。それでもやっと正弘がパスタとサラダを食おう、と決断して向かったイタリアンは開店していなかった。結局美琴が最初に提案していた近所のエコーホテルの中華レストランに落ち着く。ラーメンと卵巻きだけなのにかなり待たされる。美琴が手元に残ったリアを渡そうとしたら何か買えばいい、ということなのでホテルの入り口でアフリカらしい絵柄のユニセフカードを買った。