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いたちごっこの堂々巡り

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 ということに結びついていると考えられた。
 そんなことを想像してみると、
「やはり何か分からない組織が暗躍しているのかも知れない」
 とも思ったが、
「西園寺一族に対抗できるような組織があるわけはない」
 としか思えなかったのだ。
 しかし、警察は、
「人質が無事に返ってきたので。よかったよかった」
 というわけにはいかない。
 実際に警察の仕事はここからなのである。
 というのも、
「警察の仕事は犯人検挙」
 ということであり、なぜなら、ここで犯人を逮捕できなければ、一番問題となる、
「警察の権威というものがなくなる」
 ということになる。
 そうなると、前述のように、治安が乱れ、犯罪を起こそうとする連中に、
「警察なんて頼りないだけで、怖くもなんともない」
 と思われてしまうと、
「警察不要論」
 であったり、警察以外の、もっと強力な組織の出現が待たれるという世界にならないとも限らない。
 治安を守るという意味で、警察というのがどういう組織なのかを考えさせることになると考えれば、
「力で抑え込む」
 ということになれば、その力は、次第に派閥の争いに転嫁し、下手をすれば、巨大な組織が途中で空中分解してしまい、本来の、
「治安維持」
 という目的が、
「派閥争い」
 ということになってしまうと、組織がどうにもならなくなってしまうということも考えられる。
 それを考えて警察も、今度は迅速に犯人逮捕を目指して捜査が続いていたが、やっと、犯人が誰かという手がかりが出てきて、その人物をこれから捜査しようという矢先、その人物が、
「心中事件を起こしていた」
 ということが分かった。
「犯人は複数いる」
 ということは、誘拐事件だけに分かっていたような気がする。
 その中で一人の容疑者が浮かんだところで、その人物に、
「彼女がいる」「
 ということは分かっていた。
 そして、事情聴取をしようとして、
「任意で引っ張る」
 というところまで来ていたのだが、肝心の重要参考人が、
「数日前から行方不明」
 ということであった。
 住まいに行ってみると、マンションの隣の人がいうには、
「ここ数週間ほどお留守ですよ」
 ということであった。
 なるほど、郵便受けには、新聞が溢れかえっているではないか。それを見れば、帰っていないということは、一目瞭然だったのだ。
「心中事件だ」
 ということで、署に通報があったのが、それから2日ほどしてのことだった。
「不審な車が止まっている」
 ということで、山間の森の入り口から通報があった。
「ここには、そんなに車が入り込むことはないですからね。早朝に見かけて、数時間してもまだ止まっているので、おかしいと思って覗き込むと、カップルじゃないですか? 二人とも寝ていて、ぐったりしているようにも見える。だから通報させてもらったんですよ」
 と第一発見者がそういった。
 扉は開いていて、中を確認すると、女の方はすでに冷たくなっていて、運転席の男は、虫の息だったようだ。救急車を呼んで男は緊急搬送され、今は、集中治療室で治療中だということであった。
 男の身元は免許証からすぐに分かったが。それが、警察が追っている容疑者だと、通報時点ですぐに分かったので、門倉刑事がやってきたが、
「しばらく、予断を許しません」
 ということであった。
 女性の身元も分かり、彼女だということも分かったのだ。
 しかし、彼女の方は、すでに息が絶えており、男性の方も、難しい状況だということだ。
 ただ、警察は彼の意識が戻るのを待ちながら、捜査は続けていた。
「どうも、心中も何かおかしな感じがしますね」
 と調査した刑事が言った。
「どういうことなんですか?」
 というと、
「あの場所に毎朝、森林調査の人が入っていくことになっているようなんですよ。だから、心中をするのであれば、あんなすぐに見つかるようなところでするというのも、おかしな感じがするんですよね。しかも、その場所で発見された時、鍵がかかっていなかったというじゃないですか。まるで、発見されるのを待っているかのような気がするんですよ」
 というのだ。
 それを聞いた門倉刑事は、
「私も何かおかしいと思っていたんですよね。一緒に服毒したわりには、女の方は結構すぐに死亡したようなんだけど、男の方は、そこまですぐに死んだという感じではなかったらしいんだよな。明らかに、、女は致死量以上であり、男の方が致死量未満だったということになるんだろうからね」
 と言った。
「じゃあ、狂言心中ということでしょうか?」
 というと、
「何も狂言で心中するとしても、自分でも苦しむことは分かっていて、そこまでするんだろうか? 何か別の力が働いているように思えて仕方がないんだけどですね」
 ともう一人の刑事が言った。
「なんともいえないが、こうなってくると、本当に心中未遂をしたこの容疑者の男性は、本当に誘拐犯なのか? ということも疑わしくなってきたという気がするな」
 と、門倉刑事はいった。
「確かにそうですね。何といっても、誘拐をしておいて、何もなかったかのように人質を解放してきているんですからね」
 ということであった。
 確かに、人質は返された。捜査本部の一部では、
「狂言誘拐ではないか?」
 と思っていたので、実際に無事に解放されたのを見ると、その疑いも濃くなったといってもいいだろう。
 だか、それがどこまで信憑性があるというのか、実はよく分かっていない。
 門倉刑事にとって、今回の、
「心中未遂事件」
 というのは、正直、
「想定外のできごとだった」
 といってもいいだろう。
「まるで、犯人が警察を嘲笑っているかのようだ」
 と思えてならなかった。
「警察を犯人側が愚弄しているんだ」
 と考えるのであった。

                 大団円

 しかし、それも少し違っているような感じがした。
 何やら、彼らの身元はすぐに分かり、彼らの身辺調査は開始されたが、どうやら、心中の片割れだった彼女と、生き残った犯人と目される人は、
「何も関係が見えてこない」
 ということであった。
「どういうことなんだ?」
 被害者の身元がすぐに分かったのに、それなのに、その二人の接点が見えてこないというのは、いかにもおかしいではないか。
「影に誰か、あるいは、組織のようなものがあって、やつらは、身元がバレても構わないが、それは二人に接点がないということを知らしめるためだったということになるのであろうか?」
 と捜査本部では考えていた。
 そして、犯人ともくされる主犯格の方は、
「飲んだ毒が致死量ではなかった」
 というところに、この事件の特殊性があるのだった。
 そうなってくると、
「本当にこれって、心中なのだろうか?」
 という、
「まさか」
 と思われたことが、まんざら嘘ではないということになるのかも知れない。
 それを考えると、
「われわれ警察は、本当に、真犯人グループの手のひらの上で踊らされている」
 ということになるのかも知れない。
 そんなことを考えていると、
「今回の事件では、一人の女が死んだだけで、それ以外には死人が出ていない」
 ということであった。