あなたに似た人2
一瞬で景色が切り替わり、ルロイは軽い眩暈を感じる。目を瞬き、頭を振って、ぐるりと辺りを見回した。
「えー……どこだよ。森? 山?」
見る限り、木立に囲まれている。子どもの頃、家族でハイキングに行った森を思い出し、ぐっと口を引き結んだ。
「なあ、これから」
どうする、と言いかけて、レドリーが一点を見つめているのに気がつく。なにかあるのかと視線を向けて、ぎくりと身を固めた。
子どもがいた。年の頃は14、5歳といったところか。
小柄で、日焼けした肌。短く刈った巻き毛に木漏れ日が当たり、金色に輝く。緑色の目が、じっとルロイを見つめていた。
「兄さん……?」
熱に浮かされたような声でルロイが呟くと、相手はさっと身を翻して駆け出していく。
「兄さん! 待って!!」
追いかけようとしたルロイは、腕を掴まれ。たたらを踏む。
「おいっ、離せ!!」
降り仰いでレドリーを睨むが、冷静な声が「違います」と言った。
「なにが……!」
「あなたのお兄さんであるはずがない。彼はあなたより年下です」
レドリーの指摘に、ルロイは息を飲んだ。動く気はないと察したのか、レドリーが手を離す。
「落ち着いて。顔立ちは似ているのでしょうが、別人です」
「あっ……そう、そうだよな……。悪い。髪と目の色が、兄さんと同じだから……」
ルロイは、大きく息を吐くと、
「俺も、母さんのこと言えないな」
勢いよく髪をかき乱し、よしっと声に出した。
「んじゃ、気を取り直してっと。まずは確認。あの子が犯人なのか?」
「はい」
「即答かよ」
ルロイは、嫌そうに顔を顰める。
「じゃあ……あの子の魂は」
「入れ替えられていますね」
レドリーの平静な声に、ルロイは肩を落とした。
「そうか……。可哀想に」
「他には?」
ルロイは頭を振って、
「いや、ない。つーか、早く追いかけないとな。追跡、苦手なんだろ?」
ルロイが言うと、レドリーは不機嫌そうな顔になる。
「この距離なら、問題ありません」
「へえ?」
「問題ありません」
大股で歩き出すレドリーに、ルロイは慌ててついて行った。