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あなたに似た人1

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「うええぇぇ……」
「諦めろ、ニール」

年配の刑事にばっさり切り捨てられ、ニールと呼ばれた年若い刑事はしぶしぶ頷く。

「分かってますよ、ウィリアム先輩。ダンカン先生はいい先生」

後輩の言葉に、ウィリアムは小さく笑いを漏らした。警察と魔道士は切っても切れない関係だというのに、この若いのは魔道士を苦手にしている。はっきり言えば、怖がっていた。スーツのポケットに入れた左手には、聖印の刻まれた指輪が握られているのだろう。魔道士には効かないが。

「諦めろ」

ウィリアムはもう一度言った。
目の前では、鑑識が忙しなく動き回っている。

中心部から離れた住宅地、使い古された納屋で、中年の男が首を吊った。
男はこの家の住人で、足元には踏み台が倒れており、近くの棚には遺書らしき手紙がある。指紋も筆跡もこれからだが、疑いを抱かせる要素は見当たらなかった。
それでも、魔術が、魔道士が存在する以上、あらゆる可能性を考慮しなければならない。魔道士による現場の鑑定は必須なのだが、世の中ままならないものだ。

「失礼します! 魔道士殿が到着しました!」

制服姿の警官が近寄ってきて、敬礼しながら告げる。
刑事二人は対照的な表情を浮かべて、そちらに向かった。

「ダンカン先生、お久しぶりですね」

年配の刑事が愛想良く声をかけると、グレーのスーツを着た細身の男は無表情で頷いた。

「一年と三ヶ月、十六日振りです、ウィリアムさん」
「もうそんなになりますか。あの時はお世話になりました」

要請を出してすぐに現場へ来る魔道士など、目の前の相手以外にいない。そのありがたみは経験から身に染みているが、若い者にはなかなか伝わらないらしい。感情のない黒い目が、後ろに控えているニールに向けられ、

「あなたは、私が気に入らないようです」
「ひょっ!? い、いえ、そ、そんなこと、ない、で、あります」

慌てて否定する相手に、魔道士は無機質な声で「すみません」と言った。

「私は、人付き合いが上手くない。ですが、他の人は来ません。我慢してほしい」
「だだだ大丈夫です本当に。来てくださってありがとうございます」
「すみませんね、先生」

二人のやり取りを苦笑いしながら眺めていたウィリアムが、頃合いだろうと割って入る。

「若いのにはまだ分からんのですわ、先生のありがたみが。私からすれば、現場に来てくれるってだけで、これ以上の幸運はないですね」
「はい、現場を確認しないと、鑑定できませんから」

相変わらず表情のない相手に、ウィリアムは納屋を示して、

「じゃ、鑑定をお願いします、先生」



レドリー・ダンカンは、納屋の中を見回し、シートを被せられた遺体に視線を向け、二人の刑事に向き直った。

「自殺です」

簡潔な、誤解のしようがない言葉。
だが、その後に続いた言葉に、刑事たちは息を呑んだ。

「私と同じです。魂を入れ替えられた。その現実に絶望したと考えます。魔道士が関わっているので、この後の捜査は私が引き継ぎます」


作品名:あなたに似た人1 作家名:シャオ