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ボクとキミのものがたり

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【デニッシュ】




朝の目覚めは、目覚まし時計ばかりとは限らない。
カーテンも透過するほどの陽差しもあれば、思わぬ騒音に飛び起きることもある。
寒い季節なら 目が覚めてすら 体が温もりを離したくなさそうに寝たふりをする。
少し前は、じとぉっと押し寄せる暑さに 仕方なく目覚めた。
心地良い目覚めは、キミが起こしてくれることかなと布団の中で考えるボクが居る。

あれ?ボクの鼻先に匂ってくる。起きておいで と誘われる匂いだ。
だが はて? 昨晩の食事を思い出しても(えっと、何食べたっけ?)すぐに出てこないほどこの匂いに包まれてしまっているようだ。
そしてボクは、にんまりとなるのだ。キミが来てくれたのかな、百パーセントに極めて近い確立を感じる。だけど、ごく僅かながっかりは、そこにキミがいないことだ。
ボクの体は、足を床に下ろしたかの確認もないまま、リビングへと急ごうとしている。
(良かった。ボクのすべてが 協力的だ)
「おはよう!」
ボクの声は、キミの姿を見つけないうちに 口から飛び出した。
同時に ボクの目は、キミの姿をサーチする。(申し訳ありません。いまだ未確認です)
ボクの鼻は、匂いのもとをつきとめた。キミの卓袱台の上の紙袋からのようだ。
今朝 キミが此処に居たことは、間違いなさそうだ。では、今何処に居るのかな。
そのとき、ボクの耳は、音をとられた。音だけではない。(でかした)キミの声だ。
「おはにゃん。はぁ、起きちゃった」
キミのがっかりしたような言葉とはうらはらに キッチンの端から見せたキミの笑顔は、やっぱり最高の目覚ましだ。
「どうしたの? こんなに早く」
ボクは、精一杯自然に 尋ねた。
「起こしてあげたかったのに・・・」
「じゃあ、もう一度やり直す?」
キミは、左右にマグカップを持って 卓袱台の所に出てきて それを置いた。
コトン。コトン。置く音が、リビングに響いた。
そして、笑顔付きキミが ボクの前に居る。ボクの両腕は、キミのサイズにちょうど良いくらいの角度で開いた。遊技場にあるモノを掴むアームのように 慎重に 慎重に なんていってられないや、ボクは キミを抱きしめた。
「おはよう」
「母が お友だちからパンを戴いたの。たくさんあるから届けてあげなさいって」
じぃーん。キミの優しさは、と浸る間もなく、キミはボクに洗面所を指差し にゃんと微笑む。まったく、ボクはリモコンで動いているのか・・・。カツカツ コツコツ にゃんロボットめ!

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶