ボクとキミのものがたり
キミをリビングに待たせ、ボクは急いで出かける支度を始めた。
キミの横を通り過ぎるたび、キミの笑顔が可愛くて、ときどき寄り道をしてしまう。
そのうち、キミは、膨れたり 微笑んだり そっぽ向いたり、何をしてもボクを愉しませてくれた。
「お待たせぇ」
「待ったたにゃん」
ボクたちは、バスに乗り、電車に乗って、一面のひまわり畑に着いた。
夏の陽射しに キミは ひまわりに負けなくらい明るく照らされていた。
かくれんぼでもしてみようかな。と隠れてはみるが あれ? キミの姿を捜して顔を出してしまったボクは キミのデジタルカメラに見つけられてしまった。
キミと キミの顔よりも大きなひまわりの花と ボクの三人で撮った写真は、とてもよく撮れていた。大きなパネルにでもしてみようかな。
そろそろ帰ろうかという頃、その畑の管理をされている人が、ボクとキミとに一本ずつひまわりの花をプレゼントしてくれた。
帰りの電車の中でも 花とキミは注目されていたね。だって、キミはずっと花を眺めてにこにこご機嫌だったから……。
キミは、最寄の駅で帰るといい、ボクの部屋にはいっしょには帰っては来れなかった。
仕方がない。ボクは、ひとりでひまわりの花を連れて部屋へと帰ってきた。
部屋に着いたと同時くらいに 携帯電話が鳴った。キミからのメールだ。
『にゃにゃにゃん(愉しかったね)』(にゃじゃなくていいだろ)
メールを閉じると、また鳴った。(ほら、やっぱり。あ、違った)
キミからのメールと喜んでみたが 見ると 担当者からの仕事の連絡文がタラタラツラツラ書かれてあった。
「はぁ、休日も終わりだな。さてと 万年筆たちのご機嫌でも聞いてやろうかな」
ボクは、水を含ませた綿のついたひまわりの花を机から見えるところに立て掛けた。
蝶が 可愛い猫になって ボクの休日は ひまわりになった。
キミが忘れた腕時計のおかげといつものキミ。
ただそれだけなのに……。
また お休みくださいね。 なんて 甘くはないかなぁ。
― Ω ―
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶