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ボクとキミのものがたり

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【らくがき】




傾いてきた陽射しが、ボクとキミを背中から照らし始めた頃。
図書館からボクの部屋まで15分ほどの帰り道をボクはキミと歩いている。
ボクの周りをひらひらと蝶のように歩くキミの影が、ボクの木のような影に重なっては離れる。
ボクは、その影に触れるように腕を伸ばしては、キミを捕まえる。
そんな戯れも楽しい散歩気分のボクが居る。

マンションが間近になってきて、気がつけばキミといた蝶の姿も見えなくなった。
「今日は、ありがとう。誘ってくれたおかげで書き出すことができたよ」
良かった、とキミの笑顔がボクを見上げる。
「まだ寄って行けるでしょ」
ボクは、不意にそんな事をきいた。いつもなら当然のようにキミと部屋に帰っていくのだけれど、このまま じゃあとキミが帰ってしまう気がしたのだ。
「……うん」
キミの返事に、ボクは急いで部屋の鍵を取り出し、鍵穴に突っ込んだ。
「はい、おかえり」
「ただいにゃん」
上がり口でヒールを脱ぐキミを後ろから抱きしめた。
「どうしたにゃん」
「いや、なんでもない」
ボクは、キミを抜かすようにリビングに行くと、手提げの中から 原稿用紙と万年筆を出して机の上に置いた。

「今日は一日付き合わせちゃったね。冷蔵庫におやつが入ってるから食べようか?」
時間からすれば、夕食でもいい頃だったが、何かお礼に代わることがしたかった。
キミは、振り返るとリビングを出て行った。洗面所で手を洗っているらしい音がしたかと思ったら、にこにこの笑顔のキミが戻って来た。
「座っていてもいい?」
ボクの返事など、聞かないうちにキミは敷物の上の卓袱台の前に座った。
なんとも呆れる。でも、そんなキミをボクはいつも見ていたいと思った。
ボクは、冷蔵庫から洋菓子店の箱を出し、卓袱台のところいった。
「此処、ごいっしょしてもいいですか?」
「どうぞ。お待ちしていました」
「本当に? 本当のお目当てはこっちでしょ」

「にゃお」
「正直で宜しい。じゃあ開けて下さい」
その箱を開けるキミの表情に ボクもきっと同じように にんまりとしているだろう。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶