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ボクとキミのものがたり

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「うふ、きれい。美味しそう」
キミがそう言えば、食べる前からそんな気分になっている単純なボク。
ひとつは、スポンジケーキの上にムースがあって、ストロベリーやラズベリーなどがたくさん乗った赤い感じのもの。
もうひとつは、チーズケーキ風の上にカスタードクリームがあって、キウイフルーツやマスカットにメロンにマンゴーなどの黄緑っぽいもの。
かっこよく言ってみたかったが、スイーツに詳しくないボクは、洋菓子店の女の子が教えてくれたことを思いだしながら言ってみた。
「どちらが お好みですか?」
予想はしていたものの、キミは迷ってなかなか決められず、半分ずづ食べることでおさまった。
まあ、ほとんどキミが食べたようなものだったが、喜んでくれたことでボクは満足だった。

「どうしたら 言葉が浮かんでくるの?」
キミの突然の質問だ。洋菓子の余韻が消えようと ここはきちんと答えなくてはいけない。
「うーん、そうだなぁ……頭の中で 映画のように画像を動かしたり、ドラマを作ったりするのかな」
「いまいちわからない」
「見たり、聞いたりしたものをイメージしたり、感覚を感じたり…説明すると難しいな」
「スイーツ食べて美味しかったぁとか……」
「例えば、図書館で読んでいた絵本の絵を浮べて、そのキャラクターに声をつけたり、動かしたりしてみたりするって言えば 少しはわかるかな?」
キミが、どのように理解したのか、どうして聞いたのかはわからなかったけれど頷いて納得したようだった。
ボクは、書き始めた原稿が続きを待ちかねているような、気分がそちらに傾いていた。
「じゃあ、もう少し書いてもいいかな」
「いいよ」
「もうしばらく、其処に居てくれるかな」
「はぁい」
久し振りに、ボクの背中に感じるキミの気配に安らぎを感じているボクが居る。
ボクは、昨日まで、いやキミが来るまでのスランプなど忘れて、万年筆を走らせた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶