ボクとキミのものがたり
戻って来てもキミは、まだ笑っている。柔らかなスカートがいっしょに揺れている。
まるで二匹の蝶が、ボクをからかっているようだ。
ボクは、咳払いをひとつ。控えめにコホンと。
「じぁ、出ようか……」
「はぁい」
モンシロチョウは、舞い上がったと思ったら、開いていた窓から出て行った。
「出られて良かったね」とキミは 小さく手を振った。
「そうだね。迷子だったね。あのコも」
ボクとキミは図書館から出て、ボクの部屋に向かって歩いた。
「きっと明日も晴れそうだね」
何となく、ボクは空を見上げて呟いた。
ボクの部屋まで15分。
その帰り道の間も ヒラヒラと寄っては離れ、ずっと頭の上を飛び回る蝶と
ボクの周りをひらひらと蝶のように歩くキミがいる。
ただそれだけなのに……。
― Ω ―
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶