ボクとキミのものがたり
ふと目が覚めたボクの隣に キミがいない。床に落っこちてしまったかなと冗談を思う間もなく、飛び起きた。冷えたフローリングの床に足を下ろし、リビングへと行った。
暗い部屋を寝ぼけまなこで見据えても、キミの姿らしきものは見当たらない。
部屋の照明を点けてみても、敷物の上にもキミはいない。
(何処だ?)心拍数だけが上がるのを感じた。それは、高鳴る希望とは違う…奈落の入り口が広がり気持ちが重く落ち込んでいくさまのようだった。
時間は、朝なのだが、まだ日の出には遠い暗闇の頃だ。
ボクは、リビングの中ほどで、僅かな音も聞き逃さないようにと耳を澄ませた。
数時間前のことを思い浮かべても、キミを傷つけたようには思えなかった。
しかし、それはあくまでも ボクの主観だ。キミにとって 望まないことだったかもしてない。
(そうだ、靴)ボクは玄関を見に行った。ボクの靴の横にキミのショートブーツ。
きちんと揃えられて並んでいた。
(トイレ?)トイレのライト確認の小さな硝子は、暗かったが一応そぉーっと開けてみた。
洗面所と浴室にも居ない。
(あとは……)何部屋もあるわけではない。
全室フローリングのこの部屋には 広めのリビングとダイニングを兼用したスペース、間仕切りされたキッチン、一緒に寝ていたベッドの置いてある部屋、それにトイレと洗面所と浴室。好きな本と身の回りの使用しない荷物入れのやや広めのウォークインクローゼットくらいなものだ。
(もしかして……)「此処に住みついちゃおうかな」とキミが言って半日ほど出てこなかったことがあったウォークインクローゼットしか あとは考えられない。
ボクは、リビングを足音を忍ばせ、壁に沿ってあるウォークインクローゼットの引き戸を開けた。
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶