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ボクとキミのものがたり

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キミが、リビングに戻って来た。
まだ、目は赤かったけれど、何処かすっきりしたようなキミの表情に安心した。
「そろそろ寝ようか」
ボクの言ったひと言にキミの足が止まった。
それを見てボクは、「あ」と気付いた。だが否定する気もなかった。
ただ、キミと一緒にいたいと思って出た言葉だった。
「うん」キミは頷いたけれど、ボクはどうする?
「良かったら、シャワーどうぞ。タオルはあるところわかるよね」
キミは、以前にも此処でシャワーを使ったことがあったし、用品の置き場も知っていることだから、ボクは普段通りに言ったつもりだった。
それに 今夜のキミの様子が、少々違ったって鈍感でいてあげればいいかなと気を遣ったつもりだった。
「じゃあ 先に借りるね」
キミが浴室の方に行ってから、浴室のドアの閉まる音。シャワーの流れる音。ボクの耳に聞こえるのを振り払うように、ボクは原稿用紙に万年筆を走らせた。
纏まらない言葉に 意識しているボクを知った。
シャワーの音が止まった。浴室のドアを開けた音。キミの足音まで聞こえたかと思ったのは、ボクの鼓動のようだ。
「お先にありがとう」
「じゃあ、入ってくる。早くドライヤーで乾かさないと風邪引くぞ」
熱で寝込んだときにも貸したボクの着心地の良い服を着た濡れ髪のキミと擦れ違ったとき、いい香りがした。
ボクは、着替えを抱え、浴室へと向かった。キミの使ったバスタオルが、きちんとたたまれて篭の横に掛けられていた。まだ温かい浴室の中へとボクは、入って行った。
いつも通り、いつも通り、いつも通り……なんでこんな言葉が繰り返し頭の中を騒がしているのだろうか。こんな意識のをするのは、健康な男だとしておこうと諦めた。
ボクは、浴室を出てリビングへと戻った。キミの髪はすっかり乾いていた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶