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ボクとキミのものがたり

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「場所を変えようか」と言ってみたが「このままがいい」とキミは、ボクに背中を預けたまま、話し始めた。

大雪が降ったあの日、ボクのマンションに来る前の話しから始まった。
キミが高校三年生の冬。キミと両親とのクリスマスパーティのことは、ボクにとっては、
ありきたりの家族のちょっとリッチな様子に聞こえた。
それから、ご両親のいさかいが起こって……きっと平和に過ごしてきたキミには衝撃とショックだっただろうと同情した。
それから、家を出てきたこと。いくら何でも冬の真っ只中、ましてや雪が降っているにも関わらず、あんな服装のまま、飛び出してくるなんて、キミの無鉄砲さには、驚いた。
「ちょっ、ちょっと待って」
ボクは、何も言わずに聞いているつもりだったが、そのことに思わず反応してしまった。
「あの会社のお嬢さん?令嬢ってこと?」
「そういうのかな。その会社の社長の娘ってだけ」
「キミにとっては、それくらいかもしれないけど、世間ではそう言うんだよ」
「……でも、もう違うから……」
ボクは、キミのバッグからはみ出した見覚えのあるロゴ入り封筒に納得した。
ボクが就職の内定を貰った後、会社の破綻によって不採用、内定取り消しの通知が届いた会社のお嬢さんがキミ。
でも、あの時知っても、キミを恨むことなんてなかったと今のボクは言える。
それだけ、衝撃の出逢いだった。
キミが居たおかげで、あの時のボクの消沈した気持ちをずいぶん助けられたのだから、恩人かもしれない。その後だってそうだ。
でも、驚いたのは、ボクとそれ以前に会っていたこと。そして、ボクの入社を待ち望んでいてくれたことには嬉しさが込み上げた。まあ、個人情報流出は、目を瞑っておこう。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶