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ボクとキミのものがたり

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ボクは、住み慣れた部屋のこと 手探りでリビングのドアを開けながら僅かな明かりの中で 机の上の手袋を見た。
ドア脇の壁のスイッチでリビングの照明を点けると 部屋の中を何となく眺めた。
机の上の原稿用紙の上に転がっている万年筆がボクを待っているようだ。
床に置いたままのお土産を、キミが卓袱台の上に片付けている。
「おかえり」「ただいま」どちらもが、同じように言った。
「靴は玄関で脱ぎましょう」
「あ、だって それって……もう! ごめんなさい」
こういう素のキミが、何となく可愛い。幾つになっても 変わって欲しくないなと思った。

キミは、いつものようにフローリングの床の敷物の上で 置きなおした卓袱台(ちゃぶだい)の前にちょこんと座っている。
ボクは、一旦机の前に座ったけれど、キミの居る敷物へと移動した。
きゅるると控えめなキミの腹の虫が泣いた。
キミは、腹部を押さえ、照れくさそうに俯いた。
「お腹空いたね」
「お菓子食べる?」キミはそう言ってボクを見た。
「そうだねって、はい、手を洗いに行きましょう。何だか子どもの親になった気分だ」
ボクは、キミを連れて洗面所へと向かった。傍から見たらおままごとみたいで、いや誰が見ていようと見ていなくても恥ずかしいけれど 今は楽しかった。
「はい、綺麗になりました」ボクは、キミの掌にキスをした。
ハンドソープの香りが仄かに香った。同じものを使ったのにキミの手のほうがいい香りがするのはどうしてだろうなんてことを思った。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶