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ボクとキミのものがたり

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ボクたちは、久し振りにお出かけをして ふたりでボクの部屋に帰って来た。
ボクはポケットから鍵を取り出し、錠を開けると先に玄関に入った。明かりを点け、扉を押さえ、キミが玄関に入るのを待った。部屋の冷えた空気も外の気温よりは暖かく感じた。
ボクは靴を脱ぎ、十五センチ程の玄関の上がり口で待つ。キミがショートブーツを脱ぐ為に体を歪め、靴の踵に手を伸ばす。
ボクは、不安定な体勢なままのキミを抱きしめた。
ボクよりも背の低いキミ、しかも今は上がり口の段差がある。ボクの腹の辺りにあるキミの顔を胸元まで引き上げるように抱き上げた。
「あ、あ、くつ、靴……」
キミの片足から何とか靴は脱げ落ちたものの、もう片足は、靴を履いたまま上がり口に上がっていた。靴が床に触れないように『レ』の字に膝を折り、片足でボクにしがみつくように体を支えている。ボクは、抱きしめる腕に力を込める。
支える為? いやこのまま離したくない欲求と好意、そして照れ隠し。僅かなおふざけ…もかな。キミの足がバタついているのが面白かった。
(あれ?静かになったけど……息が詰まっちゃたかな)
腕を緩めてあげると ボクのジャケットに埋まった顔を上げた。
寒さと服に埋まった所為とはにかんだ笑顔でキミの頬は紅潮して見えた。
ボクはふっと吹き出すと、キミは「にぃ」と鼻の上に皺を寄せて、照れて頬を膨らませた。
「苦しかった?っははは」ボクは、キミを抱えたままで玄関の錠を掛けると、玄関の明かりを消した。キミの背の高さは、もう把握している。でも・・・
ボクは、キミの冷えた鼻の頭を探して、柔らかな唇に辿り着いた。
まだおたがいに冷えた唇に 想いの熱が伝わっていくようだった。
ときどき、戸惑い外すキミの唇を、ボクはずっと追いかけた。
ボクは、「はい、おしまい」もう一度、キミを強く抱きしめると、キミの目も見ずに離れた。ボクと同じようにキミも充分照れていたように思った。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶