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ボクとキミのものがたり

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カレのマンションに辿り着いて、ワタシは、やっと落ち着けた。だけど、急に不安になった。だって カレはワタシを たぶん 知らない。ワタシの素性を説明して 拒否されても嫌だと思った。それよりも 勝手にアドレスを見たワタシを軽蔑するかもしれない。
(訴えられちゃうかな)そんな不安が、冷えた身体に突き刺さるようだった。
でも、帰る気力も失せかけていた。せめて 雪のないところで、カレが居るだろうところで、一晩だけ過ごしたかった。
ワタシは、郵便受けの前の階段で 膝を抱え、座り込んでしまった。

耳に雪を踏みしめる足音が聞こえた。足音は、アスファルトの上を歩く音に変わった。
近づいてくると察したワタシは、膝に顔を埋めた。
(此処に住んでいるひとだ……どうしよう…)
戸惑いに身体を固くした。
そんなワタシに「大丈夫?」と柔らかな男のひとの声がした。
緊張していたはずなのに 気持ちは素直に答えてしまった。
ワタシは、俯いたまま首を横に振っていた。
どうなるものでもないのにと思いながら、ワタシは、顔を上げ、そのひとを見た。
髪型は違うけれど、この顔を知っている。携帯電話の画像が浮かび、見比べるように じっとそのひとを見つめてしまっていた。やっぱり カレだった。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶