ボクとキミのものがたり
帰り道。
ボクの横にうきうきと歩くにゃんこのようなキミ……一匹。
「一緒に観に行きたいにゃん」
「にゃんこのご来場はいいのかなぁ……」
「ねえ、一枚欲しい」
ボクは、少々驚いた。
「ちゃんと誘うよ。ボクが持って……」
「二枚で ひとつみたいな気がするの。その日を楽しみにしたいから にゃん」
「そっか」
ボクは、封筒から一枚キミに手渡すと、バッグから手帳を出して挿んでしまいこんだ。
キミを送り、部屋に戻ったボクは、机の上にチケットを置いた。
今までもキミといろんなものを分けてきた。でも、今度は分かれていたものが揃うのだ。
もちろん二枚でひとつの物ではないけれど、そこに添えた想いは ひとつのもの。
そっと手を置き、キミと出かける日を待つボクが居る。
ひんやりした机なのに ここだけ温かな気がする。
たったひとりの部屋で 一枚だけのチケット。
ただそれだけなのに……。
― Ω ―
作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶