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ボクとキミのものがたり

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「あなたは、ほおずき鳴らせますか」

ボクは、幼い頃、祖父母の家でほおずきの実が美味しそうに見えて口にいれたことがあった。それは、とても苦かったことと そのあと腹痛で 好物が食べられなかったことが今思い出される。(そうか、ほおずきの所為だったのか)

「いえ、したことがないです」
おかみさんは、にっこり笑うと 他の客の接待に振り返った。
その後、ボクと彼は、あの頃の話と 今の話。そして叶えたい未来の話をした。
ジョッキの何倍目からは、焼酎に変わった。炭酸が、話を止めるからだ。「げぷっ」
時間も過ぎてきた。客もずいぶん減った。おかみさんと話す時間もできてきた。
少し 彼も嬉しそうだ。ボクは、にゃんとなくキミのことを思い出していたかな。

ボクは、言葉を書く仕事をしている。好奇心は いつも持っているつもりだ。
女性がひとりで店をする。何となく浪漫や物語がありそうだ。
それに ボクたちのひと回りほど年上の女性の店に彼が通い詰めることにも 野次馬根性が目覚めた。(野次馬根性って 言う人いるのかなぁ)

週に何度か手伝いにくる板前さんもあるらしい。彼がこっそり耳打ちしてきたが、おかみさんの恋相手の知り合いとか。彼にとっては 少々というより 多々 もしくは 深々気になる存在なのではと 心配になった。
おかみさんは、本命恋相手が 今どこやら、消息もわからなくなっていることを 明るく話してくれた。
「あのね。ほおずきの花言葉は 偽りっていうのよ」
彼は、既におかみさんから聞かされたのだろう。伏せ目がちに 彼女の声を耳に流しているように見えた。
「皆さん此処に来ると 本当の愚痴を言っているような顔をして きっと少し偽っているのね。ご家庭に帰られてもどこか 無理をしていたり、どちらも偽りの顔なのかな。そして私も(くすっ)。でもこんな年下の彼に見抜かれてしまったようで……。ねぇ」
おかみさんが、彼を見るまなざしは やや色っぽかった。
おかみさんは、自分もグラスに薄めに焼酎を入れてボクたちの前に立っていた。ボクたち意外にもう客は帰ったようだ。最後の客を見送って、暖簾をしまったらしく店内に掛かっていた。

作品名:ボクとキミのものがたり 作家名:甜茶