㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第2話 ㊙ ビーナスの森
5話 奈那殿!
そんなドタバタ、かつ危険一杯の樹海内道中の後、辿り着いたのです、青くて透き通る水をたたえた池に。池の周りには我が人生で見たことがない紅(くれない)色の花が咲きほこってました。
そして池の奥へと焦点を合わせますと、そこには20m巾の岩から100本は超える水の糸。落差は多分10mはあるでしょうか。当然水煙りが上がり、樹木の隙間から差し込む光線で数本の虹が掛かっています。実にここは神秘な世界。私たちはそんな風景にしばらく釘付けとなりました。
されどもそんな事態を壊してくれたのがツユスケです。「ちょっとお取り込み中のようですけど、木々に隠れてここからは見えまへんけど、左手方向に4階建ての丸太トンガリキャッスルがあります、そこに高等生物が住んでるよう……、なんだよなあ」と。
私はこんな曖昧な言い回しに、「えっ、ホントか?」と確認し直すと、奈那ちゃんは「ありがとう、ツユ君、さあ、みんな、そこへ行ってみましょう!」と決断が実に速い。
学生時代はとにかく何事も人任せだった奈那ちゃん、やっぱり社長兼最高経営責任者になると即断即決、随分と成長したものだ。そう感心してる内にツユスケに本来業務の露払いをさせ、とっとと丸太城方向に向かって歩き進んでいるじゃありませんか。
「お待ち下され、奈那殿!」、二匹の飼い犬のヤッチンと私、必死で追い掛けました。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第2話 ㊙ ビーナスの森 作家名:鮎風 遊