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イン・シトゥ

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「キック。キックは、寝ているものを起こすという隠語だ。君、クリストファー・ノーラン監督のインセプションという映画は知っているか?」
「いえ。あまり映画には詳しくなくて」と僕は答えた。亜衣も頷いた。
「そうか。この映画は今の我々の状況と少し類似しているところがあってね。なかなか難解な作品ではあるんだが、主人公は他人の夢のなかに侵入し、潜在意識から情報を盗み出す産業スパイだ。作品中では、新しい任務として夢のなかで他人にアイデアを植え付ける、つまりインセプションを行うという不可能とも思える任務を遂行することになる。彼が、夢のなかに入り、そこから起きるためには、外からの衝撃が必要なんだ。それを作中では「キック」と読んでいる。結構、我々の状況と近いだろう? だから、ここにいる連中は、隠語で起こすことをキックと読んでいる」
「そうよ」と柴村が言った。「ここにいるなら覚えておきなさいね。キックの他にも、パプるも覚えておいて。これからパプるから」
「パプる?」僕と亜衣は首をかしげた。
「私はもう説明しないぞ。柴村、君が説明しろ」
「はーい。筒井康隆の小説にパプリカという作品があってね、これインセプションよりも、だいぶ前の作品なんだけど、設定が結構似てるところがあるのよね。主人公は千葉敦子(ちばあつこ)という女性なんだけど、彼女は精神医学研究所の研究者としての傍ら、夢探偵パプリカとして、非合法な精神病治療を行っているの。それは、他人の夢のなかに潜入して精神病を治療するというものなのね。結構面白い設定でしょ? 夢のなかに潜入する、から転じて、眠りに落ちて夢の階層に行くことをここではパプるって言ってるのよ」
「なるほど……。キックとパプるですね。覚えておきます」と僕は言った。
「ややこしくなるから、それくらいにしておけ。柴村」鷺沢が窘めた。「ということで、これから四村班をキックし、我々がパプる。では、一緒にキックしにいこう」

作品名:イン・シトゥ 作家名:篠谷未義