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㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷

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4話 火花


「なんじゃ、これ?」
 私が思わず吐くと、1秒も待たずに奈那ちゃんが背中をツンツンしてくる。これはきっと、アンタが先頭切って中へ入れという指示……でしょうね。かってのオイラはイキイキ男の子、でしたもんで、ここぞ昔取った杵柄、先頭切って玄関へと、見事に足早で。
 するとドアーはシュルシュルと開き、私たちが立つフロアーが自動的に動きました。そして「あっあっあっ」という間に受け付けカウンター前へと。
 するとそこに受付嬢が突っ立っていました。身長は1.8メートルは充分あろうか、肌は少し褐色、髪は黄金色で長い、目鼻立ちははっきりくっきり、そんな女性が仰ったのです。
「奈那さま、金太郎さんのご令嬢ですよね、そして極貧ヨレヨレサラリーマンのヨッチン、色恋にまったく無縁のヤッチン、この渓谷にようこそ! 私はあなた方のお世話をさせてもらいます、ユユリリララです」と。
 こんないきなりの挨拶に、「その通りだけど、なんで俺の事知ってんねん」とヤッチンがまず声を張り上げました。一方奈那ちゃんはそんな叫びを完全無視して、「ユユリリララさんって、お名前……、『オシャレ』!!」と令和レディー流行り言葉を一発噛まされました。
 私はこの反応に相乗りさせてもらって、「奈那ちゃんのオヤッさんが金太郎って!! 足柄山出身てことかよ、――、『スゴーイ』!!」とオシャレに負けない令和感嘆詞を一発吹かせたのであります。
 その0.3秒後です、バシッ! 奈那ちゃんの平手が我がほっぺに。
 いずれにしてもユユリリララさんはこの私たちの事態には興味がないようでして、穏やかに仰られたのです。
「これから大変重要な確認をさせてもらいます、いいですか、おのおの方は――、『ホモ・サピエンス』ですね」と。
「えっ、えっ、えっ! 『ホモ・サピエンス』?!」
 私たち一同、この世に生を受けてからこんな質問を受けたことがありません。
 俺たち、私たちって、え~と、え~と、ホモ・サピエンス……だったかな??
 しばしの沈思黙考の末、自信なく「一応そうだと思いますが」と返すのが精一杯でした。