㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷
そんな後、さすが旅行社社長・奈那ちゃん、場の雰囲気を変えるために真正面にユユリリララさんに向き合い訊いたのです。
「ところで、ここがネクラ出る樽なんですか? ひょっとして、あなたが――、『ネクラ』!?」
ヤッチンと私は「ヨッシャー!」と思わずガッツポーズ。
それでも受付嬢の背高ユユリリララさんは落ち着いてました。1秒、2秒、3秒、最終的にほぼ10秒の時の流れがあり、微笑みながら仰ったのです。
「オホホホ、あなたのお父さんの金太郎さんも同じ質問をなされましたわ、『ネクラ』出る樽って早とちりよ、これがホモ・サピエンスのDNAなのですね、いとトンチンカンで面白いわ」
この発言に私は地球上全人類が馬鹿にされてるようでして、頭にカァーと血が上り、「あんたがネクラなんだろ!」と詰め寄りました。するとユユリリララさんは「まあまあまあ落ち着きなされよ、お主は『根暗』出る樽をネクラとしか読めないの、もう一つ読み方があるでしょ、――、さっ、読み直して下さい」と手の平を下から上へハイハイハイと動作し、嗾(けしか)けてきました。
実に単純脳の私たち、これにすっかり乗せられてしまいまして、
「えーと、えーと、『根暗』はネクラではなく、ひょっとして『ネアン』?? となると『根暗出る樽』はネアン、……、ネアンデルタル?? エッエッエッ、あなたは……、『ネアンデルタール』人てこと!!」と私たち三人はもう卒倒しそう。
それでも相場師・ヤッチンはどんな暴落時でも冷静であろうと訓練して来たのでしょう、その甲斐あってか、こんなあり得ない場面においてしっかり質問しよるではありませんか。
「確か1850年頃にドイツのネアンデル谷で13万年前の骨が発見されましたが、ネアンデルタール人は4万年くらい前に絶滅されたとされてますよね、それなのに……、なぜここにおられるのですか?」
「グッドクエスチオン! だぞ!」 奈那ちゃんと私は思わずパチパチパチの大拍手。
しかれどもユユリリララさんは「その疑問は当然ですわ」と別に動じるわけでもなく「答えましょう」と仰られ、あとは蕩々(とうとう)と次のように語られました。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷 作家名:鮎風 遊