㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷
最初の100mほどは裸電球がぶら下がってるだけの薄暗い穴。とにかく転ばないように一歩一歩注意深く前進しました。やがて緩やかな坂へと。それを登り切った所から様子がガラッと変わりました。
煌々(こうこう)とした真っ直ぐ伸びた通路、その入口でAIロボットが待ち受けてました。
「お疲れ様です 男度胸なら『五尺』のからだ、・・・♫ 波に上 チョイ ♫ ヤサエーエンヤーンサーノドッコイショ ♫……、正確に申し上げれば、背丈151.515センチメートルの私、名は『露払いの助』と申します、ここから先はオイラがご案内申し上げます、後ろを付いてきなされ、まずそこの動く疲労回復通路へ、どうぞ」と言うではないですか。
もちろんそのロボガイドに従って、私たちは空港のコンコースにあるような歩く歩道にヒョイと乗り、その上を露払いの助を先頭にぷらぷらと歩きました。されどもしばらくして、私たち全員は腰を抜かすほど――、ビックリポン、ポン!!
というのも七色にキラキラと輝く虹の中を通り、その後淡い乳白色の霧の中を突っ切りました。すると、なんとなんと疲労はまったくなくなり、心身ともどもスッキリと。
「こんなことって、なんでだろう?」
そんな不思議な気分で終点で降りると、「はい、あれはリラクゼーション・フォグです、チップは要りませんから……、今日はね」と露払いの助が意味深笑いをしよる。そこで私が仕方なく500円玉1個握らせてやると、「再会時は2個かな? 楽しみでやんす」だってさ!
それからトンネルを出て少し進むと、三人の眼前に、四方そびえ立つ岩壁が。されどもその圧迫感以上に、今いる谷底の平地は緑一杯でまことに美しい。小鳥はさえずり、リスたちが走り、頭上をムササビがヒュー、ヒューと飛翔する。
「えっ、ここがネクラが出る谷か?」
私が首を傾げていると、ヤッチンが「まさにシャングリラだよ」とめずらしくお金以外の事態に感動しているようだ。
そんな時に奈那ちゃんが大きな木に隠れた建物を指を指し、「遂に見っけ、あれぞまさしく……、樽ぞ!」とさっさっと歩き出しました。ヤッチンと私は「ホッホー!」と感動の一声を上げ、必死で追い掛けましたよ。
その前に来ると鈍く光る金属製の5階建ての樽でした。そして入り口に看板が、『異生物歓迎館』と。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷 作家名:鮎風 遊