㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷
6話 奈那の提案に条件、そして返答
そんな1千年遅れのホモ・サピエンス・三人組に、ユユリリララさんが「お脳が破壊される前に、どうぞ」と飲み物を差し出してきました。
それを受けて私は、「光栄の突き当たりです」と意味不明な言葉を吐いて、ぐぐぐ~いと一気飲み。
そのお味は、レモン酒のようなイチゴ酒のような、いや葡萄酒? と我が味覚は錯乱ぎみ。それでも三人、「くさっ、うっまー!」と声を上げました。
こんな私たちにユユリリララさんはホホホと笑われ、「それはね、前頭葉疲れ、1千年先に飛んでけドリンクよ」と。
「えっ、えっ、えっ、……、脳ミソが10世紀未来へとワープ!」
そんな叫びを上げた私たちにはお構いなく、10秒後ユユリリララさんはキリッとした表情になられ仰られたのです。
「この渓谷に来られた目的があるのでしょ、さあ、遠慮なく、私たちネアンデルタール人にどうして欲しいの?」と。
この言葉を受けた我が発起人かつリーダーの奈那ちゃんがスーッと前へと進み出て、「前頭葉疲れも飛んじゃいましたので、じゃああ……、言っちゃおうかな」と。
これに「どうぞ、ただし条件を付けるかもよ」とユユリリララさんが返答。ヤッチンと私は「お主、強そう!」と一歩後退り。されども我が姫・奈那さまはもう一歩前へと進み、澄んだ声で述べられたのです。
「まず、私の父・金太郎がその節には大変お世話になったようで、まずお礼申し上げます、されども父は一昨年に他界しまして、家業の町の旅行社を私が引き継ぎました」
この後フーと息を吸い込んで、ピシッと背筋を伸ばし、後をとうとうと語られました。
「旅行社は最近利益が出てません、どうしようかと悩んでいた時に父のノートを発見しました、そこには根暗(ねくら)出る樽(たる)渓谷が、また他にもいくつかの未知ワールドがメモられていたのです、これぞ起死回生、利益創出のチャンスだと考え、『未知ワールドへ、ようこそ!』という旅プランを売り出すことと致しました」
これを聞き、ユユリリララさんは微笑、そして口を挟んできました。
「奈那さん、よくわかりましたわ、『未知ワールドへ、ようこそ!』、その第1号としてこのネアンデルタールの谷を採用してもらってもOKですよ、ただし私が今から述べる条件を受け入れてもらえればですけどね」
これに奈那ちゃんは頬をポーと赤らめ、「その条件とは、どういうものでしょうか?」と聞き耳を立て、緊張のご様子。
ユユリリララさんはこれに応え、「それはね、じゃあ、遠慮なく述べますよ、いいですか」と仰られ、次をとうとうと述べられました。
作品名:㊙ 未知ワールドへ、ようこそ! 第1話 ㊙根暗出る樽 渓谷 作家名:鮎風 遊