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輪廻する因果応報

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「もう、あんな思いをしたくないな」
 と思ったのだ。
 あの時のように、調停委員に諭されたように、
「まだ、若いんだから、やり直せる」
 という言葉は通用しない。
 それよりも、
「好きなことをしながら過ごしていく方がいいんだ」
 ということで、仕事も適当(といっても、やることだけはやるが)で、そんな状態において、
「時間を有効活用」
 ができる部署にいるじゃないか?
 と思ったのだ。
 正直、仕事は、
「時間時間のポイントを押さえていればいいだけで、それ以外は、自由な時間がある」
 ということだったので、他の人も、適当に時間を使っていた。
 そこで、相沢は絵を描くことが好きだったので、さすがに、油絵や、水彩画などができるわけもないので、
「鉛筆デッサン」
 をしていた。
「人物画」
 を描いたり、
「お城」
 を描いたりしていた。
 それが、相沢の趣味であり、
「今までの人生の中で。一番充実した毎日ではないか?」
 と感じるようになったのだ。
「もし、人生をやり直すことができるとすれば、いつからやり直したい?」
 と聞かれたとすれば、皆それぞれに意見があるだろう。
 しかし、相沢は、
「今のままでいい」
 といえるだけの人生を歩んでいくことになるのであった。

                 大団円

 理沙が、相沢の仕事先を、派遣先として現れた時はびっくりした、
 確かに理沙であったが、すっかり、老け込んでいるようだが、明らかに理沙だということは、最初こそ分からなかったが、分かってしまうと、
「どうしてわからなかったのだろう?」
 と思うほどであった。
 理沙は、
「本当に、俺のことが分からないのだろう?」
 と思った。
 もし、覚えてくれているのであれば、いろいろと聞きたいこともあった。ただ、今の時代は、
「セクハラだ」
 などと言われるので、余計なことをいえるわけではない。
 相手が気づいてくれなければ、余計なことをいうわけにはいかないのだ。
 そんなことを考えているうちに、相沢も、いよいよ、定年退職を迎えるようになった。
 しかし、相座は、
「せっかく定年退職を迎えるにあたって、会社の上司から面談を受けた際に、言われた理不尽なころに驚愕させられた」
 ということであった。
 2回、そのことについて、別の上司から聞かされたのだが、最初は、
「給料の3割カットの、契約社員扱いで、さらに、いずれは、夜勤がなくなる」
 ということであった。
 その理由というのが、
「会社が、親会社のシステム部に吸収合併される」
 ということだったのだ。
 だから、今までの社長であっても、取り締まり役であっても、どうすることもできないということだった。
 そんな、自分の会社の事情はさることながら、
「基本給の3割カットはつらいですが、今のままの仕事が続けていければいいと思います」
 というと、面接をしてくれた社長が、
「悪いけど、夜勤も近い将来なくなることになる」
 と言われた。
 さらに、その翌週、今度は別の取締役に呼ばれることになった。
 それまでは、ショックで、お金の計算ばかりしていた。
 基本給の3割カットで、さらに、夜勤手当がなくなるということは、手取りが半分以下になるということであった。
 それを踏まえたうえで、もう一人の取締役が面談をするということで、
「何だろう?」
 と思い、面談を受けた。
 その上司は、普段からとても優しく、怒られるようなこともなかった。
 それなのに、今回は、相当な厳しいことを言われた。
「今度から、今の昼の人と、同じ仕事をしてもらう」
 ということであった。
「それは、どういう?」
 と聞きながら、
「まさか、最悪のことはないだろう?」
 と思って聞いてみると、
「SEだよ。プログラム作成はもちろん、会議にも出席し、担当も持ってもらうし、出張もある」
 というのだ。
 これは、契約社員の立場で、正社員の仕事をやれ」
 ということであり、完全な、
「無茶ぶり」
 でいうことである。
「そんなことできるわけがない」
 という心の声であり、唇をかみしめたが、その心境は、この仕打ちに対しての、怒りと理不尽さを感じたのだ。
 さらに、
「今までやったこともないことなので、できるかどうか、今すぐ、日勤をしてもらって、こちらが判断する」
 と言い出したのだ。
 そして、その判断で、
「不合格」
 ということになれば、
「定年退職後の再雇用はない」
 という、実に厳しいものだった。
 そんな話を聞かされて、さすがに、
「はい、そうですか」
 といって、辞めることは簡単だが、まったくの選択肢がないわけで、その判断を、
「今しろ」
 というのも、恐ろしいことであった。
 しょうがないので、それを受けたが。考えてみれば、
「この会社にいて、自分の未来は一切ない」
 ということだ。
 そもそも定年退職ということのはずなのに、何をとち狂った、こんな目に遭わなければいけないかということで、さっさと辞めて、他を探せばいいのではないか?
 ということであった。
 しかも、この話が、理沙が入ってきてから、少ししてから起こったことであり。
「何を二人そろって、こんな目に」
 ということであった。
 彼女の方も、
「せっかくきたのに、もろとも切られる」
 ということであった。
 それを感じた時、
「そういえば、かつて同じような感覚を味わったことがあったな」
 と感じていたが。それがどうも、
「理沙と一緒にいたころだ」
 と考えてみると、
「理沙と最後に一緒だったのは、あの童貞喪失の時だった」
 ということを思い出すと、あの日は、まだ何か続きがあったことだったはずなのに、それが何だったかを思い出せなかったのだ。
 その内容が、簡単には思い出せないが、会社から理不尽なことをいわれ、自分と、理沙が、
「もろともに、ひどい目に遭う」
 ということだったのを考えると、
「何か、お互いに、理不尽さを感じたことだった」
 と思うようになった。
 そして、最近になってから、自分の人生を、ずっと果てしなく、
「気が付いたら、思い出そうとしている」
 ということなのだと思うと、
「人生が、輪廻しているのではないか?」
 と感じたのだ。
 そこに、何かしらの印遠があり、それが、一種の、
「因果応報」
 ということではないか?
 というものであった。
 死んで生き返る時を、
「輪廻転生」
 というが、この輪廻は、生きている間に繰り返させるものであり、
「輪廻転生」
 とは違い、
「自分の知らないところで、罪深いことをしてしまったことで、逃れられなくなり、それが。罪の意識の代わりに、自分に降りかかった災難のようなものだ」
 と感じるのだった。
 理沙には、堕胎経験があり、それが、相沢の子供だったのだ。
 それを知らずに生きてきた相沢だが、これまでの災難。
 いや、
「因果応報だったことは、それこそ、
「輪廻する因果応報」
 だったのだといえるのではないだろうか?

                 (  完  )
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作品名:輪廻する因果応報 作家名:森本晃次