オレンジの百日紅(続・おしゃべりさんのひとり言162)
そしてもう一つ、何としてでも解決したい『メインの事例』があるんだけど、これはどうしても答えが見付かりません。
街路樹や庭木でよく見かける、『猿滑り』についてです。
通常は、『百日紅』と書いて「サルスベリ」って読ませるようですが、それじゃ全くの当て字ですね。
夏の期間100日くらい花が咲いたままだから、この漢字が使われるんですけど、その木の表皮は剥がれ落ちて、幹がツルツルになってるから猿も登れないらしく「サルスベリ」と呼ばれるようになったみたいです。
僕が問題に上げるのは、この花の色についてです。
『百日紅』から想像すると、赤い花が咲くと思いがちですが、実は、真っ白からピンク、薄紅、濃紅、赤紫、紫、藤色等々。たくさん植えてあるところでは、そのグラデーションを楽しめるくらいに中間色が多くある観賞用樹木です。
その色の何が気になるかというと、僕は小学校~中学校の頃、このサルスベリには(オレンジ色の花がある)と思っていました。当時住んでいた家の近所に生えていたんですもの。
木の幹の表面があまりにも特徴的なので、小学生でもサルスベリの木は判別が付きます。それに僕は、自然科学が大好きですから、子供のころから岩石、星座、昆虫、動物、魚、鳥、そして植物もなんでも興味がありました。身の回りの花や木なんか当たり前のように知っています。
その僕が「サルスベリのオレンジを見たことがある」と言えば、間違いないと思っていたんです。
ところが5年ほど前、サルスベリの花を見て、(そう言えば最近、オレンジの花は見ないな)って気付いてしまいました。
僕の認識の中でも、結構レア色であったことは確かです。でもそんな色、どこにもないでしょ?
妻とはサルスベリが満開なのを見て、たまにオレンジ色の花の話をすることもありました。長年に渡って何度も何度も。だから妻も、僕が昔から(オレンジ色のサルスベリの存在を知っている)ことを知っています。
でも妻は「オレンジ色は見たことない」って言うんです。
(なんでオレンジ色がないんだろ? そんなはずはない)そう思って、ネットで調べてみたんですが・・・すると、どこにもそんな事実が記載された記事や文献を見付けることができなかったんですよ。オレンジ色に紅葉した写真ばかりがヒットします。
どうやら世の中に、「花がオレンジ色のサルスベリは存在しない」ようです。
じゃあ何? 記憶違い? 自宅近所で、当たり前のように見ていたはずなのに?
まるで狐にでもつままれたような気分です。異世界の出来事だったかのように。
じゃあじゃあ、昔住んでたあの町に見に行けばいいじゃないか。
あれ? どこだったっけ?
その場所がピンポイントで思い出せないんです。実際に見た記憶はあるのに、どこか具体的に分からない。誰かの家の庭だったのか。公園だったのか。本当に見てたんだろうか?
古い記憶ですもの。40年以上前ですから。もし場所を覚えていたとしても、もう切られてしまってる可能性の方が高いのかも。
でもオレンジの花のイメージだけは、しっかり脳裏に焼き付いてるんですよ。
夕日に照らされてとか、枯れかけて茶色くなりかけていたとかではないと思います。
あんな特徴的な樹木を、決して他の植物と見間違えていた訳でもないと思うんです。
何度も調べて、夏になるとサルスベリの街路樹に注意を払って、ずっと探してるオレンジ色のサルスベリ。
どうしても見付けることができません。
誰かしっくりくる理由を考え付いたら、教えてください。
つづく
作品名:オレンジの百日紅(続・おしゃべりさんのひとり言162) 作家名:亨利(ヘンリー)