小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

オレンジの百日紅(続・おしゃべりさんのひとり言162)

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 

オレンジの百日紅



「あれ? カギがない」
「どこやったん?」
「いや、昨日、カギ持ってたんお前やん」
出かけ際の会話です。
「ええ? あんたが車の中に置いてたやん」
「それお前が持って車出て、家のカギ開けたんやろ?」
「先に車出たん、あんたやったやん」
昨日のことを思い出しながら会話しています。
「そうやけど、買い物袋下ろしてたし、先に家に入ったんはお前やったぞ」
「え? 私やっけ? それやったら玄関の引き出しに入れたはずやもん」
お互いに一瞬の沈黙。
「そうやけど今、入ってないさかいに聞いてんるんや」
「あんたがポケットとかに入れたままちゃうん?」
「俺は持ってへんてぇ」
結局、キッチンのワゴンの中に放り込まれてました。
「お前が冷蔵庫に片付けている時に置いたんちゃうん?」
「え? そうやろか? あんたが買い物袋持ってきた時、置いたんとは違う?」

こんな記憶違いで、言い合いになることってありませんか?
こっちは絶対自信があるのに、相手が「違う!」って言い張ると平行線ですよね。
大抵は結果から、誰が正しかったかはっきりするんで、お互い素直に「ごめん」「いいよ」って許し合えれば何も問題ないですけど。
でも記憶がはっきりしないんじゃなくて、はっきりした記憶があるのに、真実にたどり着けないことって、気持ち悪いままでしょ。
古い記憶ほど、その信憑性が無くなってきて、勘違いだったのかどうか判らなくなる。
僕がどうしても気になってる記憶違いについて、二つの例をご紹介します。

一つ目は僕がまだ幼児だったころの記憶で、田舎のばあちゃん家で夏の夜、縁側にカブトムシが飛んでくるってことがよくありました。
じいちゃんが捕まえて箱に入れてくれていたんだけど。うう~ん・・・やっぱり記憶違いかな? そんなはず、あるはずないはず。
その箱に入れてもらったカブトムシのメスの色が、金色なんです。僕の記憶では。
確かにカブトムシでも色に多少の個体差があって、黒いのから茶色のまで様々です。赤っぽい「赤カブ」なんて呼ばれてるのもいます。
でもカブトムシで金色はないでしょ。ほかにも青っぽいのや、紫っぽいのも見た気がします。
僕はものを写真のように映像で覚えることが多いので、実際に見てたんだと思いたいけど、カブトムシがカラフルだなんてあり得ない。何か記憶違いがあるはずです。
長年ず~っと不思議に思ってて、(ひょっとして、電灯やカラーテレビの色が映り込んでただけだったり)とか、(当時は色の違う外国産のカブトムシがいるわけないし)とか、色々な可能性を考えてたら、一つ思い当たることがありました。
例えば、幼稚園や保育園のイスや机って、(こんなに小さかったんだ!)って驚いたことないですか?
小さい時は気付かないけど、ちょっと成長してから振り返ると、(こんなんだったっけ?)って思ったのが、小学校3~4年の頃だったかな?
つまり、当時は小さいものを標準として見てしまうので、それが普通の大きさに感じるもんでしょう?
きっと、それでカブトムシも実際より大きく感じてたんだと思います。
この説明じゃまだ解りにくいですよね。詳しく言うと、僕が幼児の時、じいちゃんが捕まえてくれていたそれは、きっとカブトムシじゃなくて、カナブンだったんですよ。
カナブンはハナムグリというコガネムシの仲間で、カブトムシの3分の一くらいの大きさです。でも幼い僕は大きく感じてたんではないでしょうか?
そしてその色合いが、銅褐色、赤褐色、緑色など、メタリックでカラーバリエーションが豊富なんです。
僕はきっとそれらを見てて、おじいちゃんが「カナブン」という名称を知らなかったのか、或いは僕が幼かったから敢えて「カブトムシ」と呼んだだけなのか?
(絶対、これが真相なんだ)と考えるようにして、心のモヤモヤを片付けました。