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警察に対する挑戦

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「やつらは、身元を隠すなら、海に捨てるか何かするよ、見つかるようなところにわざと首なし死体を置くということは、警察に、その被害さや、犯人を捜索させるためということで、殺人犯と、事後共犯とが、それぞれいるじゃないか? しかも、殺人者の知らないところということだね」
 とその人は言った。
「なるほど、それなら、理屈は分かるかも知れないな」
 と桜井がいうと、
「だったら、被害者は、幹部の人かも知れないが、それは、拉致された人ではない可能性があるな。その名刺の人物を調べたのかい?」
 と聞かれたので。
「それが妙なんだ。その組織にそんな名前の部署も人間もいないんだ」
 ということをいうと、
「それは、奴らの裏の組織だね、だけど、裏組織なのに、名刺が存在しているというのは、ちょっとおかしな感じだね。何かそこに、理由があるような気がするな。ひょっとすると、警察への何かのメッセージなのかも知れない。しかし分かっていると思うけど、相手があの組織なので、まともに信じると、やっかいな目に遭いかねないということになるのだろうね」
 と男が言った。
「ということは、やつらは、警察に捜査させるために、何かを計画したということになるのかな? じゃあ、あの死体も、実はまったく関係のない誰かということになるんじゃないかな?」
 と桜井刑事がいうと、山田刑事は、
「顔のない死体のトリックと相対する」
 と言われる、前に自分が考えた。
「一人二役のトリック」
 が絡んでいるように思えて仕方がなかったのだ。
 それを考えると、桜井刑事が話していた。
「交換殺人」
 という話にまで言及してきそうな気がしたのだった。
「だけど、じゃあ、どうしてあの神社だったんだろう?」
 と聞くと、
「あそこは、例の組織の隠れ家の一つで、その中でも重要拠点だ」
 と、相談した男は言った。
「でも、それなのに、あそこを死体発見現場に選ぶというのも、組織が絡んでいるとすればおかしいな」
 と山田刑事がいうと、
「だから、今回の犯行は、組織がやったんじゃないんじゃないか?」
 と、桜井刑事がいうと、相談した男が、
「だから、実行犯と、事後共犯の男が違うというのが、今回の事件の特徴なんじゃないかな? しかも、そのうちに、ここでは見えないもう一つの犯罪が蠢いているとすれば?」
 と男がいうと、桜井刑事が、ニンマリとした、
「ああ、なるほど、交換殺人に近いものがある」
 というと、
「そうだね、単純な交換殺人ではなく、少しひねったような交換殺人なのではないか?  
ということが言えるのではないかと思うんだ」
 と、男が言った。
「じゃあ、今回の犯罪は、警察にそれだけのことを考えさせようということなのだろうが、
通り一遍の捜査では、そこまで分かるわけがない。しかし、だからといって、露骨にこと
を起こせば、やつらに怪しまれる。彼らとしては、苦肉の策だったんだろうな」
 ということであった。
 今回の事件は、
「まず、捜索願を出していないことへの抗議と、それを警察に認識してもらうため」
 というのが一つで、
「その次には、この神社が、悪の巣窟の一つだ」
 ということがからんできている。
 それらを総合すると、
「結局行きつくところは、交換殺人と、一人二役のイメージだ」
 ということであった。
 それを思うと、
「今度の事件が、警察に対する挑戦ではないか?」
 ということであった。
 もっとも、このことも、
「あの目撃者がいなければ、分からなかったことであり、逮捕にも至らなかったことだ」
 といえるのだった。
 だが、この事件は、そこから急転直下、解決したのだが、その後に、この目撃者と、事
件を解決してくれた男が、忽然とこの街から消えてしまっているのが、二人の刑事に
は分からなかったのだ。

                 (  完  )
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作品名:警察に対する挑戦 作家名:森本晃次