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永遠の循環

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 今までに、何度もそんな思いをしたことがあった迫水としては、
「今度は警察の視線というのは、厳しい。どんな恐ろしい視線を浴びせられることであろうか?」
 と考えるのであった。
 そんな埃の出る身体であったが、一つ急転したのが、この俺を狙っているであろう久保田が、他殺死体で発見された。
 どうやら、
「チンピラと喧嘩になって殺されたのではないか?」
 ということであった。
 警察もそのチンピラの存在を知っていたということは、
「俺のことも分かっているだろうな」
 と感じた。
 しかし、警察は、迫水に対して、
「お前も白状しないと、久保田のように殺されるかも知れないぞ」
 とは言わないのだった、
 迫水は背筋が凍る思いだった。
 実際に、警察は、チンピラが行方不明になっているということで、その行方を追っていたのだ。
 迫水は、自分を狙ったのが、そのチンピラというよりは、
「堕胎させた方の女ではないか?」
 と思っていた。
 チンピラが久保田を殺したというのも、
「久保田を殺そうとして殺したわけではない」
 ということで、
「今度は、迫水を」
 ということはないだろう。
 それよりも、
「どうやって警察から逃げるか?」
 ということを考えるのが必至で、もう、人のことなど、かまっている暇などないというわけだ。
 ただ、迫水は、何かに怯えているのだったが、それが何なのか、正直警察には分からなかったのだ。
 本当は最初、迫水を確かに二人とも狙っていたのは間違いないようだったが、久保田の方は、チンピラの存在も知ってしまったことで、本当は、
「堕胎した女がいた」
 ということも分かっていたので、その女を犯人にして、迫水に、ケガをさせようとして、歩道橋から突き落とすことを考えていたのだ。
 しかし、実は、堕胎した女も、迫水を追い詰めようとして、迫水を見張っていると、久保田の存在を知ったのだ。
 そして、ふとしたことから、久保田の計画をしり、今度は、
「久保田に責任を押し付けて、迫水を落とそうと考えたのだ」
 二人とも、奇しくも、
「歩道橋から突き落とす」
 ということを計画していて、相手に計画を先にやらせることで、自分は助かろうと思っていたのだ。
 迫水の方でも、実は、そのうちのどちらかに殺意を持っていて、それを計画している最中の
「怪談からの突き飛ばし事件」
 だったのだ。
 迫水は、誰がやったか分かっているが、それを口にすることはできない。
 なぜなら、自分にも動機があって、
「機会があれば、階段から突き落とす」
 ということを考えていたのだ。
 しかも、この三人は、それぞれに、力が均衡していて、いわゆる、
「三つ巴」
 の様相を呈していた。
 しかし、実際には、
「三すくみ」
 ということであり、結果として、三すくみのような形になったのだった。
 警察が、どのような捜査をするか分からないが、結果として、
「どう転んでも、三すくみしか答えが出てこない」
 ということになると、
「最初から、誰が犯人で、事件がどのように解決するのか?」
  ということも分かってくる。
 この犯罪は、
「三すくみというものが永遠の循環」
 という形で形成されるというもので、解決してしまうと、実に、単純な事件だということになるのだった。

                 (  完  )
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作品名:永遠の循環 作家名:森本晃次