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召された記憶

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 そして、兄が死んだその時、向坂は、自分が記憶喪失になっていたということを感じ、事件の真相がその時に分かった気がした。
 しかし、それは、最後に自殺をした犯人のミスリードした結果のことであり、これは、犯人の、
「計画通りだった」
 といってもいいだろう。
 被害者の記憶はどんどんなくなっていき、一度、すべてを失った後で、戻ってくる記憶は、
「本当の真実」
 だったのだ。
 それは、
「事実に基づく、真実」
 ということで、これも、犯人の狙いだったのかも知れない。
 犯人は、今から思えば、それだけ、
「妹を愛していた」
 ということである。
「兄として、妹を愛し続ける」
 ということで、復讐を終えたところで、自分がこの世からいなくなる。
 これが、犯人にとっても、
「すべての目的」
 ということであり。それが結果として、
「自分の存在意義が、その目的だったのだ」
 といってもいいかも知れない。
「すべての失われた記憶は、犯人が、死ぬことで、一度彼が吸い取ったうえで、本当の真相というものは、
「犯人と一緒に天国へ召された」
 ということになるのだろう。

                 (  完  )
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作品名:召された記憶 作家名:森本晃次